2014年05月29日

京都の繁華街のすき家の状態を調べてきた

 下記のようなツイートを発見したので、これは現場を踏まなければ!と思い、本屋に行ったついでに京都の繁華街のすき家の営業状況を調べてきた。



1 河原町三条店は閉店ではなく持ち帰りのみ
 さっそく河原町三条店に行ってみると、閉店ではなく、持ち帰りのみになっていた。2014年5月29日13時42分現在。
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 筆者が注目したのは、この張り紙は店舗独自の作成ではなく「金山TC」から送信されてきたFAXを使用していると思われることだ。
三条河原町店拡大.jpg

 「すき家 金山TC」で検索すると、名古屋の金山駅前に「金山トレーニングセンター」というのがあることが分かる。現場判断ではなく、経営の高いレベルの業務指示で店舗の運営形態を決定しているのかもしれない。

2 四条店はリニューアル中
 河原町三条店とならんで、京都の最中心部に近い四条店は、そもそも、リニューアル中だった。ここは業務管轄が「四条TC」となっているようだが、やはり、四条トレーニングセンターというのがあるようだ。
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 すき家は、京都の繁華街に最も近い二店舗が人手不足で回らなくなっている可能性がある。もっとも、四条木屋町店というのがあるのを後で知り、ここは調べていないので、状態は分からない。

3 烏丸丸太町店は張り紙をはがした後
 烏丸丸太町店は2014年5月29日14時01分現在、普通に営業していた。しかし、張り紙を慌ててはがしたような跡があり、朝の早い段階は何か表示していた可能性がある。
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4 その他店舗
 その他、烏丸押小路店は普通に営業していた。
 また、同じゼンショーのなか卯が筆者の事務所のすぐそばにあるのだが、数ヶ月前、店舗がいきなり汚くなり、返却棚に使用後のドンブリが積み重なっている現象を見たことがあるが、今は普通に営業しているし、今日も、特に問題はないようだ。以上です。
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2014年05月27日

PC遠隔操作事件、STAP細胞の件から考える弁護士のPR問題

 今朝、江川紹子さんが、PC遠隔操作事件の自己の報道について、総括する文章を発表している。こちら→「PC遠隔操作事件を巡る自己検証」。ジャーナリストや報道機関が、自分の仕事のやり方について常に振り返りながら前に進んでいく姿勢には好感が持てるし、あの事件における江川さんの報道は、国民が知りたくても知ることができなかった情報が沢山含まれており、特筆すべきものだったと思う。確かに、少々熱が入りすぎていた側面もあり、「これ、被告人が有罪になったときは大丈夫かな・・・」とは思っていたが、弁護士からすれば、刑事事件で結果が不本意な形でどんでん返しになる(その原因は多くの場合、人質司法による被告人の自白と、捜査機関の証拠隠しに由来する)ことなどいくらでもあるし、刑事弁護をやったことがある弁護士ならみんなそれで傷ついているので、特に問題だとは思わなかった(ちにみに、その後、佐藤博史弁護士のようにさらに高みを目指すのか、日本の人質司法に絶望して遠ざかっていくのかで対応は分かれる)。

1 刑事弁護人としては立派だったが・・・
 そして、佐藤博史弁護士が、PC遠隔操作事件の主任弁護人として、無罪を主張する被告人のために超人的に献身的な弁護活動を行ったことも論を俟たない。この点について、佐藤弁護士を批判する弁護士は少なくとも筆者は見たことがない。被告人の家庭事情を想像しても、経済的には全くペイしない、まさに採算度外視の奮戦だったのではないだろうか。
 しかし、「頑張った弁護人に同業者が後ろから鉄砲を撃つな」という批判は承知で言うが、佐藤弁護士のメディアに対する情報の流し方には、問題がなかっただろうか。今回は職業裁判官による裁判のはずだから、細かい事情を知らない外野のマスコミが捜査機関の偏った捜査情報リークに乗せられて歪んだ報道がなされたとしても、結果として被告人が無罪になれば何の問題もない。一方、被告人が有罪になれば、結局、被告人の社会的評価は地に落ちてしまう。つまり、メディアに被告人側の主張や公判の進行状況を語ることで、被告人の利益にはならないのである。
(なお、事前報道では極悪人のように描かれていた被告人が無罪になると急に「さん」付けになる現象は、村木事件などでもみられるが、在京の大手マスコミがこういった捜査機関のリーク情報に依拠して針小棒大な報道を行うことに関する反省はいつまで経っても見られず、大きな人権侵害を行っていると思う。)
 これまた、業界の大先輩に対する公然たる批判になるので若干言いにくいところもあるが、佐藤弁護士は刑事弁護についてはぬきんでたプロフェッショナルであっても、マスコミを通じた依頼者(後で民事事件についても語るのでこう記載する)のPR(パブリックリレーション。メディアに対してやる場合メディアリレーションとも言うようだ)について、何か特別な知見を持っているのだろうか。PRについては専門の学会があるほどで、大手広告会社にも広告部門とは別に広報(PR)部門が存在する。例えば電通のサイト。→「メディアリレーションズ」。筆者もパブリックリレーションについては本を2冊ほど読んだことがあるだけで素人なのだが、それにしても、佐藤弁護士のやり方は大丈夫なのだろうか、とずっと不安視していた。

2 江川さんの報道から見えた気がした弁護人の弱気
 PC遠隔操作に関する江川さんの報道は、被告人側の動向を詳細に伝えたからこそ、被告人側の姿勢の変化も見て取れてしまう。時系列を追って見ていこう。
 2013年3月2日の段階、佐藤弁護士は、被告人がC#というプログラミング言語を使ったプログラミングをできないことを強調していた。→【PC遠隔操作事件】処分保留で釈放、別件で再逮捕について弁護人が語る。この時点では被告人は起訴されておらず、弁護人は検察側の手持ち証拠はほとんど分からない。この時点で弁護方針の一端を明らかにすること自体、非常に危険だ。
 同年4月18日、事件が「公判前整理手続」(起訴後、法廷でやる公判期日の前に、クローズな場で、裁判所、弁護人、検察官が争点整理を行う手続)に付されると、佐藤弁護士は「検察が、(有罪立証に)全然自信がないということがよく分かった」と述べた。この頃の発言のトーンが一番高かったのではないかと思う。→【PC遠隔操作事件】公判前整理手続が決まる
 同年5月1日の勾留理由開示公判の後の記者会見では、佐藤弁護士は「すでに起訴済みのものも、証拠が曖昧なまま、(逮捕や起訴が)見切り発車されている。裁判所が、(捜査機関の)この無謀な暴走を止めて欲しい。勾留が解かれても、捜査には何の支障もない。司法への信頼を回復するためにも、裁判所の権限を発揮して欲しい」と述べ、相変わらず検察側の証拠の薄さを強調していた。→【PC遠隔操作事件】なぜ犯行場所を特定できないのか…弁護側が追及
 ところが5月22日、佐藤弁護士の物言いは変化する。第一回公判前整理手続の後の記者会見では、佐藤弁護士は検察官の証明予定事実について、「事件と被告人のつながりについてまったく記載されていないという「異常なもの」」と述べ、さらに以下のように述べた。長いが引用しよう。
 これに対し佐藤弁護士は、次のように批判を展開した。
 「3月2日の時点で、片山さんが犯人だという確証があるなら、その証拠を出すべきだ。『見込み逮捕』というのはあるが、本件は『見込み起訴』であり、(犯人であるとの証拠が見つかっていないうちの)見切り発車での起訴ではないか。(証拠が見つからないので)検察官は公判前整理手続きを引き延ばしのために使っている。こんなことは許されない。裁判所はただちに公判前整理手続きを打ち切って、第1回公判期日を指定すべきだ」
 さらに弁護側は、検察の対応は、「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」を保障している憲法にも違反する、と主張。
 検察側は、片山氏が「どこで」「どのPCを使って」犯行に及んだのかも明らかにしていない。起訴状では、「東京都内又はその周辺」「インターネットに接続したコンピュータから」としか書かれていない。これについて、「証明予定事実記載書」には何も書かれていなかった。弁護側は「被告人の防御権を著しく侵害している」として、裁判所にただちに公訴棄却の判断をするよう求めた。これについて、検察側は1週間以内に意見を書面で提出することとなった。
ここに現れる捜査機関に対する批判はごもっともなのだが、筆者が注目しているのは、この時点での検察側の主張・立証が相変わらずかなり弱く、佐藤弁護士がその点を批判している、という点だ。
 一方、この日はC#について「弁護人によれば、逮捕直後の取り調べで、片山氏は「使えるのはCとC++、それにJava。C#は研修で勉強したことはあり、他人が書いたプログラムを実行できるかどうかのテストをしたことはあるが、書くことはできない」と供述。」とあり、被告人側の主張が「C#によるプログラミングはできない」から「C#を研修で勉強したことがある」に後退していることが分かる。想像だが、検察が提出した証拠によって、後退を余儀なくされたのである。
 そして、最後の起訴がなされ、捜査が終結した後の、同年7月11日。佐藤弁護士の物言いはさらに後退する。前日に、検察官から書面が提出され、手持ち証拠の開示もされた。これを受けた佐藤弁護士は、記者会見で「片山さんと犯行を直接結びつける物的証拠は全くなかった」と述べた。→【PC遠隔操作事件】報じられてきた「決定的証拠」はなかった
 全体的な主張のトーンが「証拠が薄い」から「物的な直接証拠はない」に明らかに後退しているのである。これが、検察官による書面提出、証拠開示の後であることを考えれば、佐藤弁護士がそれらを検討し、トーンを後退させた(すなわち、被告人にとってそれなりに打撃となる証拠が提出された)ことが予想されるのである。
 その後、同年9月25日の記者会見の内容からも、検察の立証方針が、直接証拠(例えば包丁による殺人事件で被害者の血液が付いた包丁の柄の部分から被告人の指紋が検出された、とか)ではなく、犯人でなければしないと思われる様々な事情(間接事実)を山ほど積み重ねることで、被告人の有罪を立証しようとするものであることが分かる。→【PC遠隔操作事件】犯行に使われたのは誰のPCなのか?
 もちろん、筆者は今の人質司法のあり方や、捜査機関による証拠隠しには非常に批判的であり、これらを批判する佐藤弁護士にも100%賛同する。しかし、そのような批判を刑事裁判のただなかで行う中で、自然と弁護団の弁護方針とその変化が見てとれてしまうのである。この事件の証拠を全く見ていない筆者ですらそう感じるのに、佐藤弁護士にいわば証拠を“たたきつけ”反応を見ていたであろう、検察官たちは、この報道を見て何を感じたのであろうか。筆者は「お、効いてる、効いてる」と思ったのではないか、と想像する。

3 理化学研究所の件での代理人のPRについて
 STAP細胞の件に関する小保方氏の代理人弁護士も報道機関を利用した使用者批判を繰り返している。しかし、この件については、筆者がツイッターで「科学者でなく労働者の返事する君に 懲戒処分下す」と駄句をよんだ通りだと思っている。筆者は労働者側の労働事件を専門にしている(つもり)なので、労働者の地位を守ろうとする立場なら、代理人弁護士の主張(理研の調査手続の手続不備)を主張することは十分に理解できる。しかし、今、人類の未来を変えるかもしれない世紀の大発見をしたはずの研究者に求められていることは、そこではないはずだ。残念だが、記者会見を繰り返す度に、依頼者の社会的評価を落としているように思えてならない。

4 弁護士はメディアとの関わり方を研究しなければならない
 これは自戒も込めた主張だが、弁護士は、メディアを通じた事件の広報の仕方はもっと研究を重ねるべきだと思う。
 筆者もメディアを利用した世論へのアピールは何度もしたことがあり、上手く行ったこともあれば、上手く行かないこともあった。
 例えば(京都ローカルの話だが)、京都市教育委員会の肝いりで予算を傾斜配分し、教育研究の重点校とした某市立小学校で起きた先生の過労死事件については、労災認定後に年末のどん尻に記者会見をしたところ、地方ニュースでは大きく取り上げられ、年明け早々には、京都市教委が教員の働き過ぎを抑制するための通達を出した。また、筆者自身ではなく同僚の事件だが、ウェザーニューズ社の過労自死事件でも、提訴の記者会見後、世論が大きく動き、事件は一気に和解解決した。
 一方、筆者が担当した「元横綱がプロデュースするちゃんこ鍋屋」の事件は、マスコミ報道では残業代未払の点ばかりが強調される一方、営業譲渡後に労働組合員を選別解雇した不当労働行為の点や、それが京都府労働委員会で救済され、営業譲渡先の会社の雇用責任が認められる画期的な成果をあげた点などはほとんど報道されなかった。率直に言って、PRは上手く行かなかったのである。
 しかし、最近でも筆者が事務局長を務めている京都地裁の大飯原発差し止め訴訟について、地元の京都新聞社で「司法は生きていた」大飯差し止め判決 京滋訴訟に追い風も」という報道がなされたが、これは、たまたま、大飯原発3、4号機の運転を差し止める判決を出した福井地裁の判決日と、京都訴訟の口頭弁論の日が一致し、弁護団の内々では、福井地裁の判決で差し止め判決があり得ることは前々から語られていたため、事前に京都の司法記者のみなさんに口頭弁論期日のお知らせをして、“福井地裁判決にあわせた”報道で、京都訴訟の現状を報道して貰う工夫をしたものであり、結果的に狙いは当たった。この「何かの社会的なイベントのタイミングに合わせてそれに関連する自分たちのことを報道して貰う」ことは、マスコミがすぐに飛びつかない事件をPRするための初歩的な技術のように思うのだが、それが(結果的には)功を奏したのである。
 なんか、最後はたまたま上手く行ったことに関するただの自慢で終わってしまったが、上記二つの事件に関する弁護士の記者会見を見る度に、「これで良いのだろうか」と複雑な思いを感じるのである。
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2014年05月23日

とりあえず有給休暇取ろうよ

 今日は、ツイッターが「#すき家ストライキ」のハッシュタグで湧いている。今のところ呼びかけ主体が不明なので、筆者自身は、多分、ストは起きないと思っているが、せっかくなので法律的に分析してみよう。

1 ストは労働組合に入ってやるのが王道
 ストライキは日本語で「同盟罷業」というが、労働組合を作らずに個人責任でやるのは勝手だ。しかし、それによって企業が損害を被ったときに、解雇されるだけでなく、損害賠償請求等をされる可能性もある。労働組合の素晴らしいところは
労働組合法
(損害賠償)
第八条  使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。

とされていて、労働組合も、その組合員も最初から免責されている(民事免責)ということだ。また、労働組合が行う正当なストライキは
労働組合法
(目的)
第一条  この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
2  刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十五条 の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。

とされていて、要するに、刑法の「正当行為」として刑事処罰を受けない(刑事免責)。もちろん、物をぶっ壊したりしたらダメだよ。
 個人加盟労組に明日加入して、明後日ストライキをやっても、組合員の多数決で適法にストライキ権が確立されている限りは問題ない。首都圏青年ユニオンが相談を呼びかけていた。


 もちろん、パート、アルバイト労働者にも労働組合に加入する権利はあるし、現に、東京メトロの“売店のおばちゃん”たちが勇気を持ってストを打った事例が直近の時期にある。→「東部労組メーデー メトロコマース支部ストライキ闘争!」(労働相談センター・スタッフ日記)
 何事も成功体験が必要だ。今なら、かつてプロ野球選手たちがストライキを構えて世論の支持を得たように、支持を得られるのではないだろうか(あのときの古田敦也選手は格好良かったなあ。敵地でも打席に断つと歓声が沸いたりして。)。

2 ストは無理でも有給休暇くらいとったら?
 まあしかし、このエントリを読んだ多くの読者は「でも自分はそこまで・・・」と思っただろう。そういう人は、とりあえず、有給休暇の申請をしてみたらどうだろう。「え?アルバイトに有休とかあるの?」って思ったあなた。あります。厚生労働省のお墨付きです。詳しくはこちら→「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
 読んで貰えば分かるが、週1のシフト勤務のアルバイト労働者でも、半年間働き続ければ、有給休暇が付与される。1年間の所定労働日数が48日以上なら1日、73日以上なら3日も有給休暇を貰える。所定労働日数、週の労働日数は半年働き続けて有給休暇が付与された時点での実績から判断するようだ(こちらを参照。PDFなので注意。)。
予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えありません。したがって、この場合には、雇い入れの日から起算して6か月経過後に付与される年次有給休暇の日数について、過去6か月の労働日の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断して差し支えありません。

 そして、有給休暇をいつ申請するかは労働者の自由であるのが大原則だ。休暇を取る目的を告げる必要もなく、一方的に連絡するだけで良い。店長が無視するときは、コンビニからFAXで「○月○日は有給休暇を取得します。山田太郎」と送っても良い。この場合、送信レポートを残しておいた方がよい。
 そして労働基準法には
労働基準法附則
第百三十六条  使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

という規定があり、有休休暇を取ったことをもって不利益取扱をしてはならない。有給を取って嫌がらせをしてくるような職場なら、慰謝料請求するとか、一層のこと辞めてしまうのも、昨今の情勢を考えれば一つの手だろう。

3 使用者が時季変更権を行使してきたら
 しかし、アルバイトとはいえ、一度に大量の有休申請が出て、他店からヘルプが来ても回らないような状態になれば、使用者が「時季変更権」を行使することもあり得る。時季変更権が適法に行使されれば、その日自体は有休を取れないことになる(ただし他の日に取ってよい)。しかし、時季変更権の行使をするならその旨の文書を要求しよう。口で言った言わないは禍根を残すことになる。そして、一部上場の大手企業が、アルバイトの有休申請くらいで時季変更権を行使してきたら、その文書をネットで晒してあげればいいんじゃないかしら。
posted by ナベテル at 21:15| Comment(7) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月15日

残業代ゼロ法案の「年収1000万円以上」のカラクリ

 この記事で罵声を浴びせられている可能性もある筆者としては非常に胸くその悪い記事だが、それだけに最初に全文引用しておこう。
残業代ゼロと騒ぐマスコミと左派知識人 大半の労働者には無関係な話 
(2014年5月13日 夕刊フジ)
 政府が「残業代ゼロ」を検討しているとマスコミで報道されている。きちんとした制度名としては、「ホワイトカラー・エグゼンプション」といい、いわゆるホワイトカラー労働者に対して、労働時間の上限週40時間などの規制の適用除外とする制度だ。
 その場合、「残業」という概念自体がなくなるので、「残業代ゼロ」というのは正しい表現ではない。
 日本では制度としては未導入であるが、欧米ではこうした労働規制の適用除外がある。正確にいえば、日本でもホワイトカラーエグゼンプションに類するものはなくはないが、はっきりしない部分が多く、使い勝手が悪いのだ。
 欧米の場合、労働者のうち適用除外対象者の占める割合は、アメリカで2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。
 日本でいま適用対象として検討されているのは、年収1000万円以上の労働者と、労組との間で指定された労働者だ。後者の範囲はわからないが、前者の条件である年収1000万円以上との均衡がとられるはずだ。
 前者の割合について、国税庁による2012年の民間給与実態統計調査結果をみると、3・8%しかいない。しかも、この数字は、会社役員をも含むので、労働者に対する割合はもっと低くなるだろう。となると、日本での労働時間規制の適用除外対象者の割合は、ドイツ並みだろう。
 多くの人が「残業代ゼロ」とのメッセージに、自分も対象者だと勘違いして、批判しているようだ。この種の世論調査はあまりないが、そうした反応が多いのはある意味当然だ。しかし、設問の中に「あなたは適用除外の対象者ですか」を入れたら、95%以上の人が対象者ではないと答えるはずで、世論調査にはなり得ないだろう。
 また、対象ではないことを知りつつも、現在自分の置かれている境遇において、十分な残業代が支払われていないと思っている人が多く、それへの不満のはけ口として、反対の意見を言うこともあるようだ。
 「残業代ゼロ」とのマスコミのネーミングで、正しく問題を認識できない人が多いのだ。ホワイトカラーエグゼンプションが導入されず現状維持となっても、対象にならない労働者の残業代が改善されるわけでないのだが。
 ちなみに「残業代ゼロ」の代わりに、「年収1000万円以上の人の残業代に対し所得税課税100%」といえば、反対する人もいなくなるだろう。それでも心配なら、まず公務員で実施してから民間にも適用するとすればいい。
 なお、「残業代ゼロ」を強調するのは、ある特定層に多いことに注目したい。一つは、年収1000万円以上の人が多く存在する大手マスコミや金融関係者だ。その人たちは、ホワイトカラーエグゼンプションが導入されると実際に損をする。
 もう一つは、雇用政策で居場所を失った左派識者だ。金融緩和によって失業率が低下し賃金が上昇してしまったので、労働政策専門家としてはメンツ丸つぶれだ。それを少しでも挽回したいのだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

誰も「所定労働時間に対する賃金が1000万円」なんて言っていない
 政府の「産業競争力会議」で、武田薬品工業社長の長谷川閑史が残業代ゼロ法案議論の口火を切ったことは先日ブログでも書いたが、その後、内閣府がマッチポンプ的な世論調査結果を公表し、産業競争力会議近辺では着実に議論が進んでいるようである。そのあたりは法政大学・上西充子教授の「残業や休日出勤は「評価に影響せず」は、ミスリーディングな報道」をご参照頂きたい。
 高橋洋一は「年収1000万円」が国民の3.8%しかいないという。この3.8%という数字の根拠は国税庁による2012年の民間給与実態統計調査結果だというので国税庁のホームページの該当箇所を見ると、「給与」の定義について「各年における1年間の支給総額(給料・手当及び賞与の合計額をいい、給与所得控除前の収入金額である。)で、通勤手当等の非課税分は含まない。なお、役員の賞与には、企業会計上の役員賞与のほか、税法上役員の賞与と認められるものも含まれている。」とされている。サラリーマン的に言えば源泉徴収票の税引き前の総支給額(支払金額)の欄のことを言っているようだ。
 しかし、日本ではサービス残業や、名ばかり管理職の制度による残業代の不払いが横行し、本来は賃金が1000万円を超えるはずの者が実際にはその金額が貰えていない可能性が高い。この「3.8%しかいない」というのがそもそもミスリーディングだろう。
 産業競争力会議は所定労働時間に対する賃金が1000万円などとは言っていないのであり、何も但し書きがない以上、残業代もボーナスもすべて込みの金額で「年収1000万円」と言っているのである(長谷川閑史が産業競争力会議に提出した資料はこちら。PDFなので注意)。このやり方、どこかで見たことがないだろうか。そう、固定残業代で見かけの賃金を多く見せようとするワタミのやり方と同じなのである。ワタミの新卒賃金の分析については筆者が過去に書いた「離職率は高くないというワタミの新卒賃金を考える」をご参照を。

所定労働時間に対する賃金とボーナスで700万円程度でも十分に導入可能
 現在の労働基準法を前提にして「年収10000万円」というのは、本当はどういう制度なのだろうか。下記の通り使用者側にそう不利でもない、いくつか仮定を置くと実は所定労働時間に対する年収+ボーナスで700万円程度の労働者である。実際に見てみよう。
仮定
月平均所定労働時間 173.8時間(年所定労働時間2085.6時間)
賞与        夏50万円、冬50万円 合計100万円
一月の法定時間外労働 60時間
一月の深夜早朝労働  10時間
一月の法定休日労働   8時間

 残業時間について言えば、筆者が今まで担当した残業代の事件の中ではかなり緩い方だ。また、残業代を払わない制度なので、所定労働時間は労基法の上限ギリギリに設定した。
 まずボーナスの年間100万円は残業代計算には入らない賃金ではないから控除すると900万円となる。これを12(ヶ月)で割ると75万円となり、なかなか高額のようにも見える。
 一方、これに対応する労働時間はどうなるのか。173.8+60×1.25+10×0.25+8×1.35=262.1となり、すべて所定労働時間内の労働であると引き直せば262.1時間分の賃金だということになる。
 そして75万円÷262.1=2862円(1円未満四捨五入)であり、これが残業代の基礎時給となる。これに月平均所定労働時間173.8時間を掛けると49万7416円となる。これが月平均の所定労働時間173.8時間に対する賃金であり、12ヶ月だと596万8992円である。これにボーナス100万円を足せば、696万8992円である。
 所定労働時間を大企業並みの月平均160時間としても、ボーナスを年間150万円とすると745万円程度の数字が出てくる。
 つまり、産業競争力会議のいう「年収1000万円」の本来の意味は、「ボーナス込みで、税引き前の総支給額が年収700万円〜750万円程度の人が月60時間の時間外残業、月10時間の深夜早朝勤務、月8時間の法定休日労働をした場合の賃金」ということなのである。
 そして、一度、この制度が導入されれば、この「年収1000万円」という数字自体がどんどん下がっていくだろう。

そしてAタイプには触れないお約束

 しかも、この記事をよく読むと、高橋は残業代ゼロ法案が適用される労働者が日本の労働者の3.8%だ、などと決して言っていない。もう一度、一番重要なところを引用しよう。「日本でいま適用対象として検討されているのは、年収1000万円以上の労働者と、労組との間で指定された労働者だ。後者の範囲はわからないが、前者の条件である年収1000万円以上との均衡がとられるはずだ。」。この「後者」は長谷川閑史の提案では「Aタイプ」と呼ばれるが、いや、高橋センセ、その「後者」の範囲が無定量に広がることが重大な問題の一つなんですよ。もともと、日本経団連が2005年に発表した「ホワイトカラーエグゼンプション導入に関する提言」(リンク先はPDFなので注意)では、年収400万円以上の者には残業代ゼロを導入できるようにしようとしていた。長谷川提案でも、Aタイプについては賃金額についての要件すらなく、労使合意で導入できることになっている。

まとめ
 高橋はあれこれと言を左右にするが、結局、日本経団連が多くの労働者に対して残業代をゼロにする施策を推進しており、かつ、今回の長谷川閑史提案はそれを実現するものであることは論を俟たない。筆者はこの高橋という御仁をよく知らないので浴びせるべき罵声が思い浮かばないのだが、とりあえず、「嘘つき」と言っておこうと思う。
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