去年、サムスンが腕時計を発売したとき、正直「ショボッ」「イラネ」としか思わなかった。いまホームページを見返しても感想は変わらない。サムスンは腕時計をスマホの延長線でしか考えていなかったからだ。スマホはもう十分に高性能なものを持っているし、腕時計は良い物を持っているから、どっちからみても中途半端なものだったのだ。
今日、アップルから「アップルウオッチ」なるものが発表された。ホームページを見る瞬間まで「どうせサムスンにパクられた元商品だろ。ショボいに決まっている。」と思っていたが、ページを見た瞬間、感想が変わった。アップルのターゲッティングは実に明確だ。
値段が発表されていないからまだ詳しい商売の戦略は分からないが、アップルはスウォッチをはじめとする1万円台〜のカジュアルでオサレなウオッチを使う層と、10万円台〜の高級機械式腕時計を使う層の間にカテゴリーを作ってしまい、デザイン、質感は高級機械式腕時計(しかし本体にはゼンマイは一本も使わないから安い)だけど一方でスゥオッチ並みの気軽さを演出し、かつ、性能は高級機械式腕時計をはるかに凌駕する、という時計を作り出したのだ。腕時計の文字通り顔になる文字盤(ダイアル)は精度の高い液晶でとっかえひっかえ好きにやってくれ、と。
見た感じ、アップルウオッチは明確に時計であり、スマホの亜種には見えなかった。サムスンギアーと比べるとすぐ分かるが、サムスンのには竜頭と押しボタンがない。逆に言うと、アップルウオッチには機能的には不要なはずの竜頭と押しボタンが付いている。形もレキュタンギュラーであり、機械式腕時計のお作法を踏んでいる。サイズも38mmと42mmが出るようだが、これは女性用の機械式腕時計、男性用の機械式腕時計の典型的かつほぼ定型的なサイズである。
ターゲットにされているのは、スゥオッチや高級機械式腕時計を買う層であり、ウオークマンを撃破し、ポータブルゲーム機業界を疲弊させ、カーナビの売れ行きすら下落させているアップルが、今度は固定客がいて購買単価も高い時計業界にケンカを売ろうというのである。この層は時計のために高い金を払うことを厭わないし、コレクションをする性癖も持っている。
素人の勝手な予測だが、アップルの発表を受けて一番青ざめているのは競合するスウォッチグループ(スウォッチそのものからオメガ、ブレゲなど高級ブランドまで傘下に収める)なんじゃないだろうか。アップルウオッチが成功すると、スウォッチは地盤沈下するし、オメガなどの高級なふりをした大衆ブランド(機械式だけど肝心の機械(ムーブメント)はグループ会社のETAが作った量産品)は打撃を受けるだろう。目下のところ、筆者の興味関心は、このアップルウオッチが高級時計雑誌「クロノス」などの表紙を飾ることがあるか否か、国際空港のショッピングモールの一等地にアップルウオッチだけの店が出ることがあるか否かにある。前者については、恐らく、載せまいとする強烈な力が働くだろうが。
また、バンドと液晶に表示される時計のデザインを専門にやるサードパーティーの参入も見込めるだろう。そうやって市場が出来上がっていけば、それこそオメガ辺りの高級なふりをした大衆ブランドが迎合して、アップルウオッチwithオメガみたいなコラボ商品が出来上がっていくかもしれない。
そういう広がりを感じさせる商品であり、筆者の頭のモードは俄然「買い」信号に変わったのであった。
(※なお筆者は弁護士であり市場観測については全くの素人なので素人の感想として読んでね)
追記:345ドルだそうで、日本円で4万円弱?な感じですね。やはり、スウォッチと10万円以上の時計の間を狙ってきていますね。
アップルウオッチ
https://www.apple.com/jp/watch/
【速報】3分でわかるApple新製品まとめ - iPhone 6からApple WATCHまで
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140910-00000005-mycomj-sci