日本経済新聞「新型迎撃ミサイル、米が日本に売却方針 国務省が議会通知(2018/1/11付)
しかし、北朝鮮が本気で日本の国土(在日米軍基地か原発だろうが)を狙ってくるとするなら、より迎撃困難な方法を取るはずで、ロフテッド軌道(本来はホームラン級の力がある弾道ミサイルをピッチャーフライの弾道で撃つ、といえば分かりやすいかもしれない)で撃ってくる可能性は十分考えられるだろう。何しろ、素人の私でも思いつくし、北朝鮮は、実際、その手の実験をやっている。
そして、日本政府は首都圏などに配備されている迎撃ミサイルPAC3がこのロフテッド軌道に対応できないことを認めている。ミサイルが頂点に達する最高高度がとても高いため、落下の過程で速度がどんどん上がるので、この落下速度の速さゆえ、PAC3では迎撃困難〜不可能になるのだ。
では、SM−3ブロック2Aならどうなのか。北朝鮮の弾道ミサイルは、“ピッチャーフライ”であるロフテッド軌道の頂点は高度4000kmにも達する。一方、このSM−3ブロック2Aの守備範囲はせいぜい高度1000kmのようだ。このミサイルは、フライが頂点に達した近辺の、一番スピードが遅いところを狙って打ち落とす仕組みなのだが、頂点に届かないのだ。そうすると「ターミナル」と言われる、ミサイルの落下過程に近づいた段階(1000kmまで落ちてきた段階)で打ち落とすことになるが、これはPAC3で対応できないことと同様の困難が生じる。
結局、このミサイルは、北朝鮮が決死の覚悟で自爆してきた場合に生じる(米軍基地周辺の)日本国の被害を食い止めることはできないと考える方が、間尺に合ってるのではないかと思う。
一方、北朝鮮がグアムやハワイを狙う場合、“ピッチャーフライ”たるロフテッド軌道では届かないので、ホームラン級の通常の弾道を用いることになり、その場合、北朝鮮の弾道ミサイルは高度500kmほどが頂点となり、SM−3ブロック2Aの射程に入る。結局、日本の税金でアメリカの防衛をさせられるのだ(日本国憲法では禁じられている集団的自衛権の行使になる可能性もある)。
このミサイルの購入は、日本の防衛との関係では、高い無駄金を払わされ、安倍首相以下、国内の極右勢力は勝手に意気軒昂になり、対中、対北朝鮮の軍事的緊張が増し、マイナスの結果しかもたらさないように思う。