2009年12月16日

弁護士的「サボテンの花」の歌詞解釈

 弁護士という職業は、人の離婚話を仕事で山ほど聞く。4年もそういう話を聞いていたら、「上手くいく夫婦の秘訣」は分からなくても、「破綻する夫婦(カップル)のポイント」はかなり分かるようになってきた。
 
 夫婦(カップル)が破綻する大きな理由の一つはコミュニケーション不全だ(その原因ももうちょっと語れるけど今日は脇に置いておく)。お互いの快不快、好悪、事実関係の情報を共有できなくて行き違いになるのだ。

 チューリップ(財津和夫)の歌に「サボテンの花」というのがあって「ほんの小さな出来事で愛は傷ついて君は部屋を飛び出した」という歌詞で歌が始まる。実は先週の日曜日の朝日新聞の日曜版の特集が財津和夫と「サボテンの花」だった。財津和夫によると、上の歌詞は本人の体験に基づく歌詞なのだそうだ。

 断じて言おう。彼女が出て行った理由は「ほんの小さな出来事」ではない。

 女の人は、一度共同生活を始めた男の家から「ほんの小さな出来事」で出て行くことは少ない。これは専業主婦のような形で男に経済的に従属しているほどその傾向が強まる。まして、すでに売れっ子になっていた財津和夫の家から飛び出すのは相当の覚悟があってのことだろう。堪え忍んだ末に溜まりに溜まった不満が「ほんの小さな出来事」が引き金になって爆発して、洗濯物も放り出して出て行くことになるのだ。

 ところが、男の方では彼女が何に耐えて、何に不満を持っていたのか全く理解していないので、最後の引き金の部分だけしか目がいかない。だから男が歌った歌は「ほんの小さな出来事で愛が傷ついた」となってしまうのだ。歌詞とは裏腹に、そこにあるのはお互い言いたいことを言えず(すなわちコミュニケーション不全で)破綻してしまった男女の姿なのだ。

 僕は財津和夫を非難しているのではない。実は、これは男と女が破綻する典型的なパターンなのだ。

 朝日新聞の日曜版の続きによると、花をつくった小さなサボテンの花は、その彼女が育てていたものではなく、財津和夫の兄が修学旅行の宮崎で買って、実家の母が育てていたものなのだという。ここにも男と女が破綻するもう一つの要素が隠れている。それはマザコンだ。男は自分のマザコンにはなかなか気づかない。気づかないまま、彼女との想い出と母の想い出を混ぜて歌にしてしまう。

 でも、この二つの思いを混ぜてしまうことを、女は好まない。実は、母への思いと妻への思いの順位の付け間違いをしてしまうのが結婚生活を破綻に追いやる原因の一つだ。結婚した以上は、たとえ妻が間違っていても妻の側に立つくらいの配慮をしないと、嫁姑の関係(より根本的には夫婦関係)は上手くいかない。同居している場合は、なおさらだ。妻を優位にして母が不服なら、母とは別居するのがよい。ここで両者のバランスを取るのはよくない。

 「サボテンの花」は、知らない間に、男と女が破綻するパターンを二つも教えてくれている。そういう意味ですごい歌なのだ。・・・色々書いてしまったが、僕は「サボテンの花」が好きだ。でも、好きであるほど「ほんの小さな出来事」というフレーズが気になってしまうのも事実。今の職業に就く前はこの歌の歌詞を気にしたこともなかったから、弁護士になって、少し損をしたと思う瞬間だ。


posted by ナベテル at 00:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 法律一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど。ためになります。
Posted by at 2009年12月16日 02:45
>無記名の方
ありがとうございます。
Posted by ナベテル at 2009年12月16日 08:29
おっしゃることは良くわかります。
しかし「ほんの小さな出来事」がきっかけであったことが事実ならば
それは境界例など精神疾患によくある「見捨てられ症候群」であったと思います。
ちょっとした言葉や態度を勝手に見捨てられたと解釈して関係を破綻させる、
その時に経済的な観念や今までの愛情はまったく関与しないのが特徴です。
病気を知らない人にとっては悲しくドラマティックな出来事。
精神病を隠そうとする日本の社会にはまだまだ多い出来事と思います。
Posted by 匿名 at 2010年06月12日 12:26
>匿名さん
これまた新説ですね。なるほど〜
Posted by ナベテル at 2010年06月12日 13:07
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/135735587

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。