分限免職は不当 処分取り消し求め提訴
京都新聞 2010年1月18日(月)
昨年末の社会保険庁の廃止と日本年金機構の発足に伴い、同機構に移れずに分限免職処分になった職員のうち、京都府内の社会保険事務所に勤務していた14人を含む全国の元職員31人が18日、「雇用を守る努力を怠って免職にし、不当だ」として、処分取り消しを求める審査請求を人事院に申し立てた。
分限免職は、民間の整理解雇に当たり、国家公務員法では組織改廃などで定員超過になった場合にすることができる。審査請求を支援する全厚生労働組合によると、1万人弱が年金機構に移ったが、過去に懲戒処分を受けた職員や、公務員としての勤務を希望した職員ら525人が免職になった。
組合は「定員削減が必要な場合は他省庁への配転などの措置をとる。今回は免職回避の努力がなかった」と訴えている。懲戒処分歴を理由に機構に採用しなかったのは「二重処分に当たり、違法」と主張している。
府内の36〜56歳の男女14人はこの日、京都市中京区の京都弁護士会館で記者会見した。京都市内の男性(41)は「年金機構は経験者不足で業務が混乱している。力を発揮したいのに、悔しい思いでいっぱい」と訴えた。
どうでもいいことだが、リンク元の記事には写真が入っていて、僕は右下に手だけ写っている。会見の会場には、テレビカメラが3台も来ていて、主要な報道機関の記者はほとんど来ていたと思う。今まで何回か記者会見やったことあるけど、記者レベルでの関心は一番高かった。
しかし、蓋を開けてみると、全国紙はベタ記事が多かった。関西ローカルのテレビではいくつか記者会見の様子も流れたのかもしれないけど、僕は確認できていない。今回の社保庁のような形で分限免職処分をすることが可能なら、公務員の身分保障など無いも同然だ。今後、この件についてどういう判断がされていくのかは、日本の公務員制度、ひいては労働者の権利全体をどうやって定めていくのか、ということの根幹に関わる。しかし、マスコミの扱いだけなら某ちゃんこ鍋屋に残業代請求の訴訟を提起したときの方が大きかった。こういう状況を見ると、毎度の事ながら、ものごとの国政上の(あるいは広い意味での労使間の関係性においての)重要性とマスコミの関心が全く一致していないという事実に気付かされる。もっとも、記者の関心は高かった訳だから、ベタ記事にしたのは社保庁職員に対するバッシング世論がとても強い状況をみたデスクレベルの判断なのかもしれない。
そういう中で、京都新聞社は一応写真入りの記事を書いてくれた。事件の当事者が京都に在住しているからかもしれないが、全国紙が軒並みベタ記事の中で、地方紙としての意地を感じる。地方紙が大きい記事を発信すると、その記事がインターネットにも流れる。やはり、全国紙とは違う視点を持つ地元のメディアは大事だと思うのだ。
追記
毎日新聞は、京都版のみだけど、写真入りで結構詳細に報道してくれていた。ただし、ネット上は写真ありません。
旧社保庁:分限免職取り消し請求 府内は14人不当性訴え /京都
◇「整理解雇」の元職員「年金記録、職人技の調査方法職場にプラス」
旧社会保険庁を分限免職になった元職員が18日に処分取り消しを求めた人事院への審査請求には、府内では14人が加わった。過去に懲戒処分を受けておらず、明確な説明のないまま「整理解雇」された元職員もいる。記者会見に臨んだ元職員らは「長年、年金記録に携わり、職人技のような調査方法も知っている。職場に戻れればプラスになるはずなのに」と処分の不当性を訴えた。【熊谷豪】
審査請求をしたのは、府内の社会保険事務所に勤務していた36〜56歳の男女14人。うち10人は「年金記録ののぞき見」(業務外閲覧)をしたなどとして過去に懲戒処分を受けたことがあり、新たに発足した日本年金機構には採用されなかった。
他の4人を含めた14人は同機構発足(1月1日)前の昨年12月28日付で同庁から民間企業では「整理解雇」に当たる分限免職処分を受けた。4人は公務員として勤務し続けるため、配置転換を求めたが、不採用だった。
業務外閲覧で処分を受けたことのある男性(56)は「他職員が自分のIDカードで業務外閲覧をした末の『冤罪(えんざい)』だ。押し問答の末、免職になるとは思わずしぶしぶ認めてしまっただけだ」と憤った。
厚生労働省への配置転換を求めたのに不採用となった女性(41)は「昨年2月の採用面接は10分程度しかなく、いったい私の何が分かったのか。採用された人もいるが、基準は不透明で納得できない。突然収入がゼロになり、生活にも困っている」と訴えた。