2010年というのは、もともと、安倍政権下で憲法改正の国民投票が計画されていた年だ。一方、『坂の上の雲』は生前の司馬遼太郎自身が「ミリタリズムを鼓吹する」と言って映像化することを拒んでいた作品だ。そういういわく付きの作品が、周到に計画されて2010年に映像化されること自体、何か因縁めいたものを感じる。安倍晋三はNHKの番組製作に干渉した経歴を持つ人物なので陰謀論はさらにリアリティーを持つ。
まあ、それは脇に置くとして、このドラマのクライマックスに来るのは日本海軍が対馬海峡でロシアのバルチック艦隊を打ち破った「日本海海戦」だ。日本海海戦という単語自体は歴史の教科書にも出てくるし、この海戦が世界に与えた影響が大きいことも知識として知ってはいる。でも、この海戦がどんな戦闘で、でどれだけの人が死んだかなんて教科書には書いてないし、たいした興味も持ってこなかった。しかし、海戦というからには海の真ん中で戦艦同士が戦闘する訳で、船が沈めば大量の死者が出るはずだ。NHKが『坂の上の雲』を放送することになって以降、縁あって集会のパネリストなんかもやったので、その辺のことにちょっとした興味を持ってきた。
で、wikiで調べたらとりあえずの数字は書いてあった(wikiのこの辺のマニアックな記載は凄い)。ちょっと衝撃を受けたが、
ロシア 戦死者4380人
日本 戦死者117人
だそうだ。
敗れたロシアの戦死者数は膨大な数に上ってるし、勝った日本ですら100人以上の戦死者が出ているのだ。
こういう大量の戦死者はNHKの『坂の上の雲』ではどういう風に扱われるのだろうか。ロシアとだって友好関係を築かなければいけない現代において、4500人もの死者を置き去りにして「万歳万歳」と叫ぶドラマでいいのだろうか。とても気になるところだ。
「安部氏が番組制作に介入」という一方的な風説を広めている事も問題ではないでしょうか?弁護士って言葉に慎重な人たちだと思っていたが、そうでない方もいる事がわかりました。