僕は、子供の頃、弁護士にならないならNHKスペシャルの取材班になりたいと考えていた(なり方は最後まで調べなかったけど)。一週間のあらゆるテレビ番組の枠で一番好きなのが日曜午後9時からのNHKスペシャルの枠だったし、この枠で放送する番組はレベルが高いものが多く、ああいうものを製作する現場に関われたらいいなあ、と思ったのだ。特に、アジア太平洋戦争当時の日本軍部の無責任と非合理性を徹底的に追求した『ドキュメント 太平洋戦争』はNHKスペシャル史上でも不朽の名作だと思っている(Wikiに項目があったので概要を知りたい方はどうぞ)。ちなみにこのシリーズは角川文庫で『太平洋戦争 日本の敗因』という名前で書籍化もされていて、アマゾンでも買える。
「玉砕」の番組概要
さて、最初から脱線しまくったが、今回の『玉砕』。概要は以下のような感じ。
2010年8月12日(木) 午後10時00分〜10時49分
総合テレビ 玉砕 隠された真実
「生きて虜囚の辱めを受けず」戦陣訓に則り、全将兵が死ぬまで戦う「玉砕」。
昭和18年5月、アリューシャン列島アッツ島における日本軍守備隊の「全滅」がその始まりとされる。
部隊の全滅を「玉砕」という言葉で大々的に発表した大本営。しかしそこには隠された意図があった・・・。
アッツ島を境に「玉砕」は各地の戦場で頻発、戦死者は急激に増えていく。
更に、戦局が悪化すると、「玉砕」は大本営の報道によって「一億玉砕」として、一般国民に対しても広がり、最終的に310万人の犠牲者につながっていった。
死を目的とする攻撃「玉砕」はなぜ引き起こされていったのか−。
番組では、アッツ島守備隊の「玉砕」をきっかけに、大本営が「全滅」を「玉砕」と美化し、国民にも「死」を求めていった過程を、新資料と証言をもとにつまびらかにする。
内容はとても興味深かった。実は、日本軍が文字通り全滅した戦場はアッツ島が初めてではなく、1942年の12月〜1943年1月にかけて、パプアニューギニアのブナなどで、大本営による「棄軍」と部隊の全滅、という事態が発生していた。しかし、大本営は自らの責任を隠蔽し、部隊が「転進」したという嘘をついた。アッツ島の全滅はその後の1943年5月に起きたが、今後、部隊の全滅という事態が多く発生することが予想されたことから、大本営の責任を隠蔽するために「玉砕」を仕立て上げ、「生きて虜囚の辱めを受けず」と書かれた『戦陣訓』の精神を国民に浸透させる手段に使おうとした、というのだ。全滅を美化するため、大本営がアッツ島守備隊からきた救援要請を無視したにもかかわらず「アッツ島守備隊は救援を全く要請しなかった」という大嘘をメディアで垂れ流した。その後は各地の「玉砕」が美談として喧伝され、「転進」したはずのブナさえ後で「玉砕」と発表されたそうだ。
番組の内容にすごみを持たせるのが、アッツ島守備隊の生存者の証言。何の補給もなく、弾薬すらないままにアメリカ軍の一方的な攻撃を受ける様子をリアルに証言していた。
こういう番組を作るのがNHKの使命だ
今回の番組でも、日本軍が最初に「玉砕」したとされるアリューシャン列島のアッツ島(現在は原則立ち入り禁止)を、特別の許可を取って取材をしたり、アッツ島守備隊の日本将兵2600人中、わずか27人だけ生き残った方々の住所を突き止めて数人からインタビューを得ていた。当時は青年だった将兵たちも今は90歳手前。中には「こんな事をカメラの前で話すようになるなんて夢にも思わなかった」みたいなことを言う方もいて、あと5年遅かったら、貴重な証言はこの世に記録されないかもしれない。総じて、極めて価値の高い取材活動をしており、『ドキュメント 太平洋戦争』を彷彿とさせるモチベーションの高さに素直に「すげー」と思った。
僕は、こういう質の高いドキュメンタリーを、視聴率とは関係なく作るのがNHKの使命だと思っている。最近のNHKの視聴率至上主義は目に余るものがあるので、原点に立ち返って、良質な番組を作って欲しいと思うのだ。
捕虜として連れて行かれたシベリア。
少なからずとも白色人種の捕虜になるとあのシベリアのような人を人とも思えない残虐な扱いをされることが解っていたんでしょ。
だから人間としての尊厳を守るための「玉砕」だった。当時はこれしか選択肢がなかったのではと思っています。
捕虜の扱いは大分違ったのでは。
現代の認識で語っても意味がないと思います。
その国に赴任したことのある外交官ならまだしも
民間徴用された一般の人はおろか軍部の上の人でもわからないことであり
結果論でしかないと思います。