失業の元社保庁長官、スウェーデン大使に 民間枠で採用
朝日新聞 2010年8月20日19時55分
昨年末に厚生労働省を退職した渡辺芳樹・元社会保険庁長官(57)のスウェーデン大使就任が、20日の閣議で決まった。社会保険庁が解体された際に、天下りを原則認めない政府の方針で失業したが、民間枠で登用された。
渡辺氏は、今年発足した日本年金機構の副理事長就任が有力視されていたが、懲戒処分歴を理由に長妻昭厚労相が「例外を認めない」と起用を見送った。スウェーデンは高福祉で知られ、渡辺氏は年金局長の経験などを買われたとみられる。
閣議決定は全閣僚の署名が必要。長妻氏は20日の閣議後会見で「昨日聞いた。基本的には外務省の人事なので、淡々とサインした」と語った。
この人の懲戒処分は業者から接待を受けていた関係のものと聞いている。
僕は、この人がスウェーデン大使になったことについて異議はない。社保庁勤務の経歴を活かして、是非、日本とスウェーデンの架け橋になって頂きたい。まさか、10年以上前に業者から接待を受けた「自分自身の若さゆえの過ち」くらいで、大使としての資質が失われることはないだろう。
でも、問題はある。懲戒歴のある職員がほぼ一律に首切りになったこととの不均衡だ。首を切られた職員が復職を求めて提訴したことについては7月24日に書いた「社会保険庁の分限免職問題で提訴した感想」を参照して欲しい。渡辺氏の眼差しは、首を切られた職員たちには全く向けられていないと言っていい。ザ・ラスト・サムライの渡辺謙は部下とともに突撃して運命をともにしたが、ザ・ラスト・社保庁長官の渡辺芳樹は2009年の年末に自らの名で525名の部下を「斬首」し、自分だけ生き残ったのだ。これは頂けない。彼は、大使になる前に、部下がちゃんと職を全うできるように全力を尽くすべきだったと思う。彼がスウェーデン大使になることについて本質的な問題がないのと同様、生まれる前からあった年金記録問題でバッシングされて首を切られた職員たちには、年金業務を行う上で何の欠格理由もないのだ。
一方の長妻厚労大臣は口ではぶつぶつ言いながら渡辺氏の大使就任を承認していて、一般の職員に対する厳しい対応とは全く対照的だ。全く二枚舌としか言いようがない。この程度の御仁が日本の年金行政を預かり、日々、問題を深刻化させている状況を見るにつけ、腹立たしいやら、情けないやら、是非とも、訴訟で一泡吹かせたくなるのだ。