1号機は「メルトダウン」…底部の穴から漏水
読売新聞 5月12日(木)22時55分配信
東電は、圧力容器の温度は100〜120度と安定しているため、事態がさらに悪化する可能性は低いと見ているが、圧力容器を覆う格納容器からも水が漏れだしている可能性が高く、格納容器を水で満たす「冠水(水棺)」など事故収束に向けた作業は難航も予想される。
あれ?これ、いつ壊れたの?今まで聞いたことがない話だし、記事では原因に言及されてないので、東電は原因を説明しなかったのだろう。
格納容器はとても頑丈な容器である、と聞いている。最近になってぽっかりと穴があいたとは考えがたい。さかのぼると、1号機が水素爆発したときか、さらにさかのぼって震災そのもので壊れたと考えるのが分かりやすい。そして、震災の報道をたどっていくと、ごく初期に次のような報道がされていたことを思い出した。
福島第1原発・正門付近の放射線量、午前8時前に73倍に激増
産経新聞2011.3.12 10:20
原子力安全・保安院は12日、福島第1原発正門付近の放射線量が同日午前7時40分現在で通常時の約73倍に当たる5・1マイクロシーベルト時だったと発表した。前回の発表では通常の約8倍で、放射線量は急激に増加している。
また、次のような報道もあった。
福島第一原発、中央制御室で1千倍の放射線量
読売新聞 2011年3月12日07時10分
東日本巨大地震で自動停止した東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)の正門前で、放射線量が通常時の約8倍、1号機の中央制御室では、同約1000倍に達していることがわかった。
経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が12日午前6時過ぎ、記者会会見して明らかにした。
制御室の線量は毎時150マイクロ・シーベルト。そこに1時間いた場合の線量は、胃のレントゲン検診の約4分の1程度に当たる。
同原発1号機では、格納容器内(建屋)の圧力が異常に上昇し、同日午前6時現在、設計値の約2倍に達している。経済産業省原子力安全・保安院によると、この圧力の異常上昇は、圧力容器(原子炉)から放射性物質を含んだ水蒸気が建屋内に漏れたことで起きていると見られる。圧力の高まった水蒸気が建屋から漏れ出し、施設外建屋外の放射能レベルを上げている可能性が高い。
wikiによると、1号機でベント(弁の開放)に成功したのは3月12日の14時30分とのことだ。1号機の原子炉建屋内にあった中央制御室や1号機周辺では、ベントの前からかなり高いレベルの放射能が漏れていたことが分かる。震災当時、第一原発で勤務していた作業員の証言でも、配管が壊れたりする状況が目撃されている。
4号機の爆発原因は水素ではない?
福島第一原発については、もう一つ気になっているのが次のニュース。
4号機の激しい損壊、水素爆発以外の原因か
読売新聞 5月10日(火)0時14分配信
東京電力は9日、福島第一原子力発電所で、原子炉建屋が激しく壊れた4号機について水素爆発以外の可能性があるとみて調査していることを明らかにした。
建屋5階の使用済み核燃料一時貯蔵プールで、水素を発生させる空だきの形跡がないことなどが判明。別の原因との見方が浮上した。
建屋内には、原子炉内のポンプを動かす発電機の潤滑油貯蔵タンク(約100トン)があるほか、溶接作業などに使うプロパンガスのボンベもあったとみられ、東電で関連を調べている。
東電はプールの水を調査。その結果、放射性物質の濃度が比較的低く、水中カメラの映像でも、燃料を収めた金属製ラックに異常が見られないことから、空だきが起きていたとは考えにくいことがわかった。
この記事に書いてある潤滑油のタンクが壊れたとすれば、それは地震の時と考えるのが妥当だろう。4号機は地震で内部が滅茶苦茶になっていた可能性がある。
福島第一原発は、津波による電源喪失と電源復旧が出来なかったことが、大事故の原因とされていて、もちろん、それは間違ってないと思う。しかし、少なくとも1号機については、津波が襲来する前にかなり壊れていて、事故が不可避な状態になっていた可能性もあるのではないだろうか。もちろん、これは新聞記事の断片を拾い集めた推測に過ぎないが、柏崎刈羽原発の一部が新潟県中越沖地震で壊れたことを考えても、あり得ない話ではないと思う。この点については、今後も注目していく必要があると思っている。
追記:だから何なのだ
だから何なのだ、という指摘が身近なところからあったので追記する。仮に、津波襲来前に地震だけで原発が大きく壊れていたとすると「地震は想定内(で被害も防いだ)。津波は想定外(で被害が出た)」という主張が完全に崩れることになり、原発の安全神話が根本的に間違ってたことになる。日本は地震列島だから、原発が地震に耐えられるかどうかは重大問題なのだ。
追記(2011.5.16)
同じ事を考えていた記者がいたようで、ブログを書いた後に新聞記事になった。予測的中。
1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気
2011/05/15 02:02 【共同通信】
東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。
1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。
関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。
この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。
さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。
追記2011.5.25
地震前に壊れていたことを示唆する情報の続報が出てきた。
3号機の冷却配管、地震で破損か 津波前に
朝日新聞2011年5月25日5時14分
東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所3号機で、炉心を冷やす緊急システムの配管が破損した疑いがあることが、24日に公表された東電の解析結果からわかった。東電は「想定を大幅に超える大きさの津波」が事故原因だとしてきたが、解析が正しければ、津波の到着前に重要機器が地震の揺れで壊れていた可能性がある。
解析によると損傷の可能性があるのは、過熱した核燃料が空だき状態になるのを防ぐため、原子炉の水位を保つ緊急炉心冷却システム(ECCS)の一つ。「高圧注水系」と呼ばれる冷却システムだ。核燃料の余熱による水蒸気が主な動力源なので、電源がなくても動く。
東電によると、3号機では3月11日の津波で外部からの電源がなくなった後、別の装置で原子炉を冷やしていたが、翌12日昼ごろに止まった。水位低下を感知して冷却方法が高圧注水系に切りかわると、水位はいったん回復。その後、電池が尽きて動作に必要な弁の開閉ができなくなった。水位はふたたび下がっていき、大規模な炉心溶融(メルトダウン)につながった。
高圧注水系の作動時には、それまで75気圧ほどだった原子炉圧力容器内の圧力が、6時間程度で10気圧程度まで下がった。通常なら、ここまで急速な圧力低下は考えにくいため、東電は水蒸気を送る配管のどこかに損傷があり圧力が下がったと仮定して解析。結果は圧力変化が実際の測定値とほぼ一致し、配管からの水蒸気漏れが起きた可能性が出てきたという。
ラベル:福島第一 原発