月給制の基礎時給の計算の仕方の詳細
昨日の記事では、話の流れを重視して、月給制の基礎時給の計算の仕方を詳細に記載しなかったので、ここに記しておく。これについては労働基準法施行規則第19条にまとめて書いてある。
第十九条 法第三十七条第一項 の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第三十三条 若しくは法第三十六条第一項 の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。月給制は4号の計算方法による。原則として全ての賃金を合計した合計金額を月の平均所定労働時間で割ることになる。ただし、交通費、家賃補助、家族手当、別居手当、子女教育手当、ボーナス、祝い金が実態を伴って支給されている場合は合計額から除く(労基法施行規則21条)。実態がないとだめなので、家賃補助と言いながら、家持ちの人にも一律に支払われているような場合は除く必要はない。
一 時間によつて定められた賃金については、その金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異る場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異る場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
そして、所定労働時間は事業所によって違うから自分で調べるしかないが、困ったらとりあえず173.8で割ってみると良い。これは労基法が定める最低水準なので、これより所定労働時間が多い場合はアウトで、173.8に修正されるからだ。
はてブでは「計算するのが怖い」的な意見もあったが、勇気を持ってやってみて欲しい。
固定残業代は必ずOKな訳ではない
前回の記事はワタミフードサービス株式会社の45時間分の固定残業代について、適法に導入されている前提で記事を書いたが、この種の固定残業代がすべてOKなわけではなく、むしろよく分析すれば違法な事例の方が多い。以下は昨年、筆者と事務所の同僚が弁護した事件で勝訴した事例だ。
高級ホテルの長時間未払い残業事件に勝訴!〜「給与第一」を活用様々な実態を分析して、固定残業代が残業代としての実態を有していないということになれば、上記事例のように残業代としての支払いが無効とされ、固定残業代だった賃金も基礎時給に入れ込んで(すなわち基礎時給が大幅にアップして)一から残業代を払いなおさせることができる場合もある。なので、
過労死ライン超過の残業
2012年10月16日、京都地裁において、ホテル「THE SCREEN」を経営する株式会社トレーダー愛に対して、280万円あまりの残業代の支払いを命じる判決(既に確定)が下されました。元ホテルマンの原告Oさんが勤務していた「THE SCREEN」は、ミシュランガイド日本版にも紹介された高級ホテルです。 判決が認定したOさんの時間外勤務は、少ない月で72時間、多い月では112時間を超えました。また、過労死ラインを超過する80時間超の残業が常態化していました。
アルバイトより低い時給?
被告は、Oさんの給与を、基本給月額14万円、成果給13万円とし、この成果給と1回3000円の宿日直手当を時間外手当として支払い済みであると主張しました。被告の主張ではOさんの時給は890円ほどにしかならず、担当業務が少ないアルバイトスタッフの賃金の方が高いくらいです。
成果給は時間外手当ではない
これに対して判決は、(宿日直手当を含めると)時間外手当が基本給を上回るような被告の賃金体系は不合理であることを指摘し、時間外手当と定められた成果給の中には基本給部分が混在しているとして、既に時間外手当を支払っているという被告の反論を否定し、成果給と宿日直手当を割増賃金計算の基礎に入れました。被告の就業規則では、成果給を時間外手当とし、割増賃金計算から除外することが明記されているものの、役職者手当と通勤手当を除く他の7つもの手当が全て時間外手当とされていること、また、各地の基本給がほぼ最低賃金に合わせて設定されており、よほど長時間労働をしない限り時間外手当が発生しない仕組みになっていることなどからも、被告の給与体系は、時間外手当を支払わないための便法であると断罪したのです。
id:tikani_nemuru_Mみたいな実態がある場合は、諦めずに労働者側で労働事件をやる弁護士(日本労働弁護団のHPで紹介されている事務所なら頑張ってくれるだろう)に相談する価値がある。一方、
補足すると、「残業代込みの基本給」という賃金体系では、計算に入っていた残業時間をオーバーしても支払われないことが多いです。そういう誤魔化しのための有効な手段となってますね、現実。
id:nextworkerという意見もある。この印象は筆者も感じていて、一部の社労士がそういう就業規則の導入を奨励しているようにも見える。しかし、固定残業代は、本来は管理が難しいものだ。管理がずさんで実態が薄ければ、残業代請求する余地も出てくる。諦めずに頑張って欲しい。
自分は経営者側の人間だけども、この賃金体系って、自分の観測範囲だとジワジワと広がってる印象を受ける。意図はやっぱり総賃金の圧縮。
悲痛な叫びが聞こえる
はてブのコメントで「何か実感こもってるな〜」と思ったのがこれ。
id:Dursan夜遅くに居酒屋で働いているスタッフを見ると、陰ではそう思ってるんだろうな〜と思う。この意見に限らず、『蟹工船』的な意見が漏れてくる。やはり、日本の労働のあり方を見直さないといけないし、夜中までコンビニとか飲食店が開いているのが当たり前の生活を変えていく必要もあるのではないかと思う。三大都市圏の地下鉄の営業時間を24時間にする、というニュースがあったが、それは過労死を増やすだけだろう。
集計の中でなかったことにされる勤務時間。その虚ろに人は酔い、泣く。人それをサービス残業という。、、、、、、、、、貴様らに名乗る名前はないっ!
そして最後に一言。ワタミにしろ、他の企業にしろ、ネット上で批判しても大して痛くないんだよ。やっぱり、職場で労働組合を作って待遇改善を勝ち取っていくのが一番重要だと思う。相談にはいくらでも乗りますよ。