と言うんでしょうな。ご本人は。しかし、最近、安倍首相の発言がますます大言壮語になり、現実離れしているように見える。
私に責任がある
安倍首相は、ISISの日本人人質2名が殺害されたことについて、国会で「このような結果になったのは大変残念。その責任を引き受けるのは当然だ。すべからく国の最高責任者である私にある」と述べたそうである(2014.2.4読売)。しかし、菅官房長官は記者会見でISISと「交渉するつもりは全くなかった」と言い切っている(2014.2.2ロイター)。また、遺体の引き渡し交渉すら頭ごなしに否定した(時事2014.2.2)。
一国の政府が、テロ集団に税金から捻出した身代金を払うことを正面から言えるはずはないのだが、それにしても、菅官房長官の発言は、最初から交渉する気もなく、これからも最低限の交渉をする気もないことを示している。実際、湯川氏、後藤氏がISISに拘束された後、政府はほとんど何も交渉しなかったようである。
例えば、フランス政府はISISに人質となったジャーナリストを救出しており(陰で身代金を払ったとも言われる)、二人が拘束された後の日本政府の交渉が全体として稚拙またはやる気がなかった点は否めない。そもそも、中東歴訪自体、外務省からは反対意見が強かったという(週刊ポスト2015.1.26)。有り体に言えば安倍政権は人質を見殺しにしたのである。菅官房長官はそのことを公言している。そういう状況の下で、安倍首相が、自分が責任を引き受ける、みたいなことを言うのがとても、気持ちが悪い。大言壮語しているのに、この「責任」には現実の安倍政権の行動からして、何も中身がないからである。
罪を償わせる
安倍首相の発言はまた、人質二人の殺害について「罪を償わせる」と発言し、世界を驚かせた。しかもこの文言は安倍首相自らが加筆したものだという(日刊ゲンダイ2015.2.2)。大言壮語の意味するところは不明であるが、日本の法律で彼らを裁くことがほぼ不可能なことだけは確かだし、自衛隊が報復攻撃する訳でもあるまい(常識的には)。なんでこんな発言を付け加えなければならないのだろうか。
アメリカが先制攻撃しても集団的自衛権行使可
筆者は、安倍首相は頭の中では、人質問題を、国政上の大争点になっている集団的自衛権行使法制、また、憲法9条の改悪問題につなげたいのだと思っている。というか、実際、NHKの日曜討論でその手の発言をしているようだ(マスコミには載らない海外記事「人質問題を再軍備推進に利用する日本政府」)。
そんな安倍首相は、ついに、同盟国(例えばアメリカ)が先制攻撃をし、それに相手国が反撃してきた場合も、日本がアメリカとの集団的自衛権を行使することが可能、とまで言い切ってしまった(2015.2.2日経)。この発言は極めて重大で、要するに、日本がアメリカの侵略戦争に堂々と参加できるということだ。平和憲法があるのに。憲法9条の文言解釈とかいうレベルではなく、日本が世界でも指折りの好戦国になれると宣言したようなものだ。昨年7月の閣議決定すら踏み越えてしまっているように見える。現に憲法9条があるもとで、それを国民投票に掛ける勇気も今のところないくせに、言葉だけはひたすら大言壮語を繰り返しているし、法治国家なのに憲法を無視して政治がその方向で動いてしまっている。
「経済は好循環」「アベノミクスはトリクルダウンではない」
首相の大言壮語は外交・防衛方面だけかというとそうではない。今、消費税増税によって日本経済がガタガタになっているのは大方が同意するところだと思われる。筆者の足元でも、消費税増税後、法律相談自体が明らかに減っている。経済指標の数々も日本経済が安倍政権の失政によって冷え込んでいることを示しているように思う。そんなときに、安倍首相は「アベノミクスによって経済は好循環に入っている。雇用でも賃金でも、間違いなく経済は良くなっている」と述べたのである(2015.2.5毎日)。
その一方で、国会論戦で野党に追及されると、アベノミクスはトリクルダウン理論とは異なるとまで言ってしまったようである(2015.2.2毎日)。え〜〜〜、アベノミクスって、金融緩和、財政出動、成長戦略(規制緩和)の3本の矢で企業活動を活発にし、トリクルダウンで国民経済を好転させる政策だったんじゃないのか〜〜。政府のホームページにも「投資によって生産性を高め、雇用や報酬という果実を広く国民生活に浸透させる」と明記されているんですが(内閣府「安倍政権の経済財政政策」)。
一番いいのを頼む・・・
前から問題発言が多い安倍首相だったが、ここ1〜2週間の発言は一段と常軌を逸しており、もはや現実が見えないし、見ようともしていないように見える。しかし、経済問題一つ取っても、こちとら国民は安倍政権の失政で不景気のどん底に突き落とされているのに、「好循環」などと居直られるとたまったものではない。そろそろ、この首相にはご退場頂くべき時が来ていると思う(何度も言っている気がするけど)。
最近のラノベとして「紫色のクオリア」を引き合いに出したり、
国内のムスリム団体が「イスラム国」という名称を使わないで欲しいと要請しても
「オウムが仏教であるのと同程度にはイスラム国はイスラムである」などと嘯いてみせたり、
そういう人たちが安倍の敵として無能さを演じ続けてくれる限り
安倍は安泰でしょうよ。