2010年02月26日

阿久根市の降格人事が公平委員会で覆る

 毎度毎度お騒がせの鹿児島県阿久根市・竹原市長。今度は、降格処分を濫発していた件について、市役所内部の機関である公平委員会で取消決定を出されていた。

3職員降格「違法」 阿久根市の公平委員会 処分取り消しを裁決


2月25日7時7分配信 西日本新聞
 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が昨年4月の人事異動で職員3人を降格した処分について、市公平委員会はこれを違法と判断し、処分取り消しを裁決した。裁決は23日付。3人は降格を不服とし申し立てていた。市総務課は「市長が出張中でコメントできない」としている。

 裁決によると、3人は地方公務員法に基づく降格理由の説明書交付がないまま課長から課長補佐にされたり、兼務していた係長職を解かれて事実上降格された。

 一方、竹原市長は公平委員会の審理で、3人は「その職に必要な適格性に欠く」などとする降格理由を主張したが、委員会は説明書交付がなかったことから違法と判断。降格理由も「見当たらない」とし「不当な降任(降格)」と断じた。

 阿久根市の昨年4月の人事異動では計10人が降格された。3人を支援する自治労県本部の高橋誠書記次長は24日、記者会見し「市長が裁決に従わなければ法的対抗手段をとる」と話した。

 行政処分をする際に、理由書を交付しないということはあり得ない。理由書を交付するのは、処分の理由を明らかにし、処分の根拠法令と不服申し立ての手続もあわせて告知することで、処分を受けた人の人権を守ろうとするものだ。そんな手続が違法であるのは論を待たない。

 それにしても、降格処分が公平委員会でひっくり返るなんて、ほとんど前代未聞なのではないだろうか。僕も、それぞれの自治体内部の実際の状況を知っているわけではないけど、公平委員会というのは市役所内部の機関だ。そこでひっくり返ってしまうような稚拙な処分はしないのが通例だし、公平委員は市長が選任するのだから、市長の判断におもねる結果を出す場合の方が多いだろう。そんな公平委員会でも処分が取り消されたのだから、これは、結構、画期的だと思う。

 処分が取り消された以上、市長は元の役職に戻さなければならないし、従前通りの給与を支払わなければならない。市長がまた払わなければ、差額を裁判で請求するしかない。いつまで、こういう無駄なことを続けるのだろうか。
posted by ナベテル at 01:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月22日

派遣労働者の裁判を勝たせる会の結成総会

 今日は、自分も原告代理人をしている、ジヤトコの京都工場で働いていた「派遣」労働者たちがジヤトコに対して直接雇用の地位確認を求めた訴訟の原告を励ます集会に行ってきた。
100221_1526~01.jpg

 集会でも紹介されていたように、手弁当でやっている事件なのだが、あらためて、頑張らなければ、と思った。

 なかなか刺激的だったのが、龍谷大学の脇田滋教授の記念講演。派遣労働という労働形態が、雇用責任を負いようのない派遣元の企業に使用者としての責任を負わせ、本来雇用責任を負うべき派遣先(ユーザー)が責任を免れる、という欺瞞に満ちた実態を告発するものだった。確かに、月極で駐車場を借りるよりコインパーキングの方が値段が高いのは常識だ。でも、臨時的に業務を行うはずの派遣労働者は正規労働者より安く買いたたかれるのが常識だ。これは異常なゆがみと言うほか無い。派遣労働法を、派遣労働者を買いたたく法律から、派遣労働者の権利を守る法律に変革するのは急務だろう。
 労働者のための法律についても、教授できるのは正規の大企業の社員ばかりで、非正規労働者は法律の網がかかっていない実態もリアルに報告された。
 脇田先生は、賃金体系についても言及していて、ここが面白かった。今の日本の給与体系は、大企業の男性社員は一家を養うための賃金を与えられている一方、過労死するほど働かなければならない。中小企業の社員は男でも十分な賃金はもらえず、パートで働く女性や非正規の労働者は生活保護基準以下の賃金しかもらえないし、社会保障すら教授できない。今、非正規の労働者がどんどん増えているが、もともと、大の大人が生活していくための賃金をもらえる制度設計になっていない。ここを底上げして、社会保障費+賃金で安心して暮らせるようなヨーロッパ方の賃金体系を作らないといけない、という話だった。これは、単に労使間の賃金の問題だけじゃなくて、医療や福祉等の社会保障政策を抜本的に充実させなければならないし、大企業の男性社員について言えば賃金を抑制する方向の提案だから、障害も多い。でも、今の日本では、これくらいやらないと展望が開けない気がした。

 なかなか刺激的な集会だった。少し、脇田先生の本も読んでみようかな。 
posted by ナベテル at 01:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月12日

残業代計算ソフト「給与第一」ヒット中

 2月4日に「残業代計算ソフト(エクセル)「給与第一」頒布開始」という記事を書いた。実際に頒布を始めたのは前日の2月3日。一昨日(2月10日)、事務所のホームページ管理委託業者の人と打ち合わせがあったときに聞いたのだが、すでに「給与第一」のダウンロード件数が合計で120件を超えたそうだ。電話での問い合わせも二件あった。

 ダウンロードはこっちです↓
http://www.daiichi.gr.jp/activity/2010/0201.html

 計算上は一日10人以上ダウンロードしているということになる。もちろん、この勢いが今後も続くとは限らないんだけど、とりあえずは「ヒット」と言えるだろう。

 今、労働者を取り巻く状況は本当にひどい。労基法に書いてある最低限の権利すら全く守られていない人が沢山いる。朝早くから深夜までこき使われて、ただの社員なのに「店長」とか「主任」とか名前が付いてるだけで給与定額とか無茶苦茶な違法行為がまかり通っていて、過労死する人も沢山いる。不況だ、無能だ、といわれてすぐに首を切られる。
 かといって、僕らの世代の人間は自分で立ち上がることもできず、労働組合にも結集する気力もない状況だ。そういう人たちにただ「労働組合に結集しろ」と言い続けても問題は解決しない。僕は、そういう人たちが最後にできるプロテストは、在職中にしっかりと記録をつけて、最後、一気に残業代請求することだと思っている。やむなく退職に追い込まれた後だって残業代の請求はできるのだ。

 「給与第一」は、そういう労働者としての最後の抵抗をするための「最終兵器」として開発したつもりだ。法律の知識が何もなくても、手順に従って記入さえすれば、自分がもらえる残業代や深夜勤務手当の額が自動で計算される。自分で出退勤の記録を取るのにも使えるし、タイムカードの情報を転記してもいい。とにかく記録を続けて、ここぞというときに使うようにして欲しいのだ。もちろん、僕はこのソフトのことについても、具体的な残業代請求についても相談にも乗るつもりだ。日本中の「弱い」働く人たちが、みんなこのソフトを使って(使わなくてもいいんだけど・・)自己防衛をするようになれば、少しは状況が変わるんじゃないかと思っている。

 もちろん、職場を辞めてしまったら、明日から食うに困ることは変わりないのだが、このソフトで「少しはマシ」になる人が増えれば幸いだ。
posted by ナベテル at 00:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

ギリシャのストを見習え!マジで。

 前政権が財政赤字を隠していたのがばれて、欧州連合内の大問題になっているギリシャだが、公務員を含めた労働者が総決起してストライキを始めた。こっちは朝日新聞の記事。

ギリシャ50万人スト、交通ストップ 財政再建策に反発
朝日新聞 2010年2月10日21時44分

 【アテネ=南島信也】財政危機に陥っているギリシャで10日、同国最大の公務員労組「ギリシャ公務員連合」(組合員数約75万人)が公務員や社会保障費の削減といった政府の財政再建策に反発し、一斉ストライキを行った。昨年10月のパパンドレウ政権発足後、初のゼネストとなる。

 ストには組合員ら約50万人が参加。全空港が閉鎖され、国際線・国内線とも全便が欠航となったほか、鉄道やバスなどの公共交通機関も全面ストップ。官公庁や学校、病院も休止となり、公共機関の機能が完全にマヒした。首都アテネでは、国会議事堂前などに数万人が集結し、政府の緊縮策に抗議する集会やデモを行った。参加者のフランゴスさん(25)は「いつも労働者にしわ寄せがくる。我々にはストライキで抵抗するしか方法がない」と話した。

 同国では政権交代後、前政権が巨額の財政赤字を隠していたことが発覚し、財政危機が表面化。2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比12.7%と、ユーロ圏で最悪の水準に陥っている。

 政府は年金受給年齢の引き上げや公務員給与凍結、社会保障費削減などを柱とする財政再建策をまとめ、EUの承認を得ている。

 ただ24日には同国最大の民間企業労組「ギリシャ労働総同盟」(同200万人)もゼネストを計画していることから、ギリシャの自力再建は暗礁に乗り上げる可能性も出てきた。

    ◇

 ドイツ、フランスはギリシャへの緊急支援をめぐって検討を始めており、10日にはフランスのサルコジ大統領とギリシャのパパンドレウ首相が会談した。

 なんだかブログ引用機能が不調なようなので写真を引用できなかったからAFPの方も引用しておく。

 欧州連合の通貨であるユーロは域内各国が財政政策を協調し合って初めて成り立つ(詳しい仕組みは勉強してないから知らない)。ギリシャの経済が破綻すれば、単にギリシャ経済やギリシャの国民生活が破綻するだけじゃなくて、崇高な理想に基づいて作られた共通通貨の試みが大きく挫折することも意味する。ギリシャの財政赤字はギリシャの問題であってギリシャだけの問題ではないのだ。

 それなのに、この労働者たちの激しいデモ。僕なんかは、これこそ、労働者のあるべき姿なのではないか、と思うのだ。これは国が滅茶苦茶になってもいい、ということとは違う。いずれ、財政再建をするためにギリシャ国民全体が苦しまなければならないことは目に見えているのだ。記事には書いてないが、労働者の要求は「失敗した奴らが責任を取れ。金持ちから金をはき出させろ」に尽きるのではないだろうか。経済に大穴が開いたときに、弱いものにしわ寄せして乗り切るのではなく、弱いものが団結して抗議して、強いところにしわ寄せしろ、という要求は至極まっとうなものだと思うのだ。複雑な国外との関係がある元で、変に萎縮せずに自分たちの要求を前面に出せる姿こそが、労働者の鑑だといいたいのだ。

 日本を振り返ってみるとどうだろうか。昨今の大不況で一番最初に悲鳴を上げはじめたのは、政策によって超優遇されてきたトヨタをはじめとする自動車産業だ。前も書いたけど、今は減税と補助金(結局、税金)のシャワーを浴びながら高収益を上げている。その次に声を上げるのは家電業界で、エコポイントでやはり税金のシャワーを浴びている。そのくせ、下請け企業には「アジアとの競争」を押しつけ、雇用している労働者は非正規ばかりでまともな賃金を払う気もなく、貯め込んだお金を株主に配当するなんて破廉恥なことを平気でやっている。税金払え、賃金払え、下請けに金払え、というと、「嫌なら国外に出るぜ?」と逆ギレする。日本の大企業は政策的に異常なほど優遇されているのに、なおかつギリシャの労働者以上に、自分たちの全く筋違いな要求を堂々と貫徹しているのだ。

 一方、日本の労働者はどうだろうか。外国との協調関係どころか、国内の「勝ち組」の企業を必死に守るために労働者がバシバシ切り捨てられているのに、ほとんど声すら上げられない。社会に出る前から非正規労働者になる道しかなく、社会に出てもぼろ切れのように扱われているのに、それは自分たちの能力不足や努力不足のせいだとすり込まれていて、未だに「努力すれば豊かになれる」なんて賢しら顔でいう成功者の本が流行っている。

 こういうニュースが流れる度に、僕は声を大にして言いたくなる。日本人の皆さん、ギリシャの労働者の爪の垢でも煎じて、もっと、傲慢になったらどうですか?と。少なくとも、この国のリーディング・カンパニーは、労働者なんかよりよっぽど傲慢なことを平気で言ってるし、無理筋の政策を平気で実現させてますよ。
posted by ナベテル at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月04日

残業代計算ソフト(エクセル)「給与第一」頒布開始

 一昨年から制作し、実戦で修正し続けてきた残業代の計算ソフト(エクセルシート)「給与第一」を公開した。詳しくは事務所のホームページを見ていただきたい。ダウンロードもできる。
http://www.daiichi.gr.jp/activity/2010/0201.html

 もともとは某相撲取りの名を冠したちゃんこ鍋屋の残業代請求訴訟で、未払の期間が長く、原告の数も多かったことから事務処理軽減のために作ったのだが、その他の案件でも使っている間にかなり汎用性のあるものになってきたのだ。大量の時間をかけて開発したので、秘蔵しておくのも勿体ないし、かといって、これを売って商売すれば労働事件をやる仲間の弁護士に後ろ指を指される(そもそも商売ができる水準に達してるのかも不明)。依頼者等に頒布している間に、いつかはネット上に流通してしまうかもしれない。それなら、いっそのこと、著作権を明示して無償で公表してしまえ、と思った次第だ。

 このソフトのポイントは
 ・深夜勤務手当を算出可能
 ・週40時間越えの賃金を算出可能
 ・遅延損害金も自動計算
 ・プリントするとそのまま訴訟資料になる
ということだ。

 ネット上には、使用者の立場から労務管理するための賃金計算ソフトは結構転がってるんだけど、大概、法律の適用が杜撰。未払賃金が大量に発生しかねないものが多い。特に週40時間超の賃金を正確に算出するソフトは、少なくともフリーのものでは皆無。また、遅延損害金の算出ができるものも皆無。そもそも、訴訟資料として使うように設計されていないので見にくい、など様々な欠点があった。
 「給与第一」は未払賃金を請求する労働者の立場から、請求漏れの無いように時間外労働手当、深夜・早朝割増手当を計算し、かつ、遅延損害金まで確実に算出するようにした。手動だが付加金の計算も容易にできる。

 リンク先の取扱説明書にも書いてあるとおり、まだ対応できない事例もあるが、それはかなり例外だと思う。今現在、ネット上で無償で手に入るものの中では「最強」だと信じたい。また、今後とも徐々にパワーアップしてより良いものを作っていきたい。
posted by ナベテル at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。