前政権が財政赤字を隠していたのがばれて、欧州連合内の大問題になっているギリシャだが、公務員を含めた労働者が総決起してストライキを始めた。こっちは朝日新聞の記事。
ギリシャ50万人スト、交通ストップ 財政再建策に反発
朝日新聞 2010年2月10日21時44分
【アテネ=南島信也】財政危機に陥っているギリシャで10日、同国最大の公務員労組「ギリシャ公務員連合」(組合員数約75万人)が公務員や社会保障費の削減といった政府の財政再建策に反発し、一斉ストライキを行った。昨年10月のパパンドレウ政権発足後、初のゼネストとなる。
ストには組合員ら約50万人が参加。全空港が閉鎖され、国際線・国内線とも全便が欠航となったほか、鉄道やバスなどの公共交通機関も全面ストップ。官公庁や学校、病院も休止となり、公共機関の機能が完全にマヒした。首都アテネでは、国会議事堂前などに数万人が集結し、政府の緊縮策に抗議する集会やデモを行った。参加者のフランゴスさん(25)は「いつも労働者にしわ寄せがくる。我々にはストライキで抵抗するしか方法がない」と話した。
同国では政権交代後、前政権が巨額の財政赤字を隠していたことが発覚し、財政危機が表面化。2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比12.7%と、ユーロ圏で最悪の水準に陥っている。
政府は年金受給年齢の引き上げや公務員給与凍結、社会保障費削減などを柱とする財政再建策をまとめ、EUの承認を得ている。
ただ24日には同国最大の民間企業労組「ギリシャ労働総同盟」(同200万人)もゼネストを計画していることから、ギリシャの自力再建は暗礁に乗り上げる可能性も出てきた。
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ドイツ、フランスはギリシャへの緊急支援をめぐって検討を始めており、10日にはフランスのサルコジ大統領とギリシャのパパンドレウ首相が会談した。
なんだかブログ引用機能が不調なようなので写真を引用できなかったからAFPの方も引用しておく。
欧州連合の通貨であるユーロは域内各国が財政政策を協調し合って初めて成り立つ(詳しい仕組みは勉強してないから知らない)。ギリシャの経済が破綻すれば、単にギリシャ経済やギリシャの国民生活が破綻するだけじゃなくて、崇高な理想に基づいて作られた共通通貨の試みが大きく挫折することも意味する。ギリシャの財政赤字はギリシャの問題であってギリシャだけの問題ではないのだ。
それなのに、この労働者たちの激しいデモ。僕なんかは、これこそ、労働者のあるべき姿なのではないか、と思うのだ。これは国が滅茶苦茶になってもいい、ということとは違う。いずれ、財政再建をするためにギリシャ国民全体が苦しまなければならないことは目に見えているのだ。記事には書いてないが、労働者の要求は「失敗した奴らが責任を取れ。金持ちから金をはき出させろ」に尽きるのではないだろうか。経済に大穴が開いたときに、弱いものにしわ寄せして乗り切るのではなく、弱いものが団結して抗議して、強いところにしわ寄せしろ、という要求は至極まっとうなものだと思うのだ。複雑な国外との関係がある元で、変に萎縮せずに自分たちの要求を前面に出せる姿こそが、労働者の鑑だといいたいのだ。
日本を振り返ってみるとどうだろうか。昨今の大不況で一番最初に悲鳴を上げはじめたのは、政策によって超優遇されてきたトヨタをはじめとする自動車産業だ。前も書いたけど、今は減税と補助金(結局、税金)のシャワーを浴びながら高収益を上げている。その次に声を上げるのは家電業界で、エコポイントでやはり税金のシャワーを浴びている。そのくせ、下請け企業には「アジアとの競争」を押しつけ、雇用している労働者は非正規ばかりでまともな賃金を払う気もなく、貯め込んだお金を株主に配当するなんて破廉恥なことを平気でやっている。税金払え、賃金払え、下請けに金払え、というと、「嫌なら国外に出るぜ?」と逆ギレする。日本の大企業は政策的に異常なほど優遇されているのに、なおかつギリシャの労働者以上に、自分たちの全く筋違いな要求を堂々と貫徹しているのだ。
一方、日本の労働者はどうだろうか。外国との協調関係どころか、国内の「勝ち組」の企業を必死に守るために労働者がバシバシ切り捨てられているのに、ほとんど声すら上げられない。社会に出る前から非正規労働者になる道しかなく、社会に出てもぼろ切れのように扱われているのに、それは自分たちの能力不足や努力不足のせいだとすり込まれていて、未だに「努力すれば豊かになれる」なんて賢しら顔でいう成功者の本が流行っている。
こういうニュースが流れる度に、僕は声を大にして言いたくなる。日本人の皆さん、ギリシャの労働者の爪の垢でも煎じて、もっと、傲慢になったらどうですか?と。少なくとも、この国のリーディング・カンパニーは、労働者なんかよりよっぽど傲慢なことを平気で言ってるし、無理筋の政策を平気で実現させてますよ。