赤旗が報道するマイクロソフト日本法人のリストラの実態は「ひどい」の一言だ。あるリストラ対象の社員はチームの中で一人だけ誰もいない「離れ小島」に机を置かれ、ミーティングにも呼ばれず、社内便も届かず、本来の仕事は奪われて派遣労働者と同じ仕事をさせられてた、という。また、他の削減の対象になったある労働者はいきなり呼び出されて「自主」退職するように迫られた。拒否すると自宅待機を命じられた。自宅待機解除後はストレスで血を吐いたという。復帰するとその人にも「島流し」が待っていた。このような実態は人権侵害そのものだ。欧米各国なら決して許されないだろう。
勝間和代が言うように、日本においては終身雇用制(法律上は「期間の定めのない雇用」という)の正社員を解雇するのはそれなりにハードルが高い。それなりに厳格な手続きをふまないと解雇が無効とされる。しかし、日本の場合、従業員を退職に追い込むための無法はほとんど放置されている。制裁的な人事、本来の業務を奪って雑務や草むしりをさせる、通勤が困難な遠い職場への配置換えなどは、明らかに嫌がらせ目的でも裁判所が鈍感なせいで違法とされない例も多いし、裁判を起こしても勝つまでに何年もかかってしまう。慰謝料の額も低い。結局、その間に力尽きてしまう例が多い。また、マイクロソフト日本法人のような「島流し」や「座敷牢」と呼ばれる隔離措置も横行している。
欧米では企業が無法なことをすれば社会的な反撃が激しいし、労働組合も黙っていない。使用者が大規模なリストラを使用とすれば、法以前の問題として覚悟が必要だ。しかし、日本ではそれらがまともに機能していない。すでに書いたように企業が行う無法はほとんど放置されてしまう。職場は人間関係そのものだ。人間関係を根底から破壊されても解雇は違法だ、と主張し続けられる人は相当な鉄人だろう。実際には使用者の無法に対して、多くの人は職場を去らざるを得ない。解雇そのものの規制が厳格=解雇しにくいという図式はストレートには成り立たないのだ。
マイクロソフトの世界的リストラのなかで、なぜ日本のリストラ割合が世界平均の倍もあるのか。その謎を解く鍵は、グローバル企業から見れば、実は、日本は労働者や社会全体の反撃が弱い、リストラをやりやすい国だ、という点にもある気がしてならない。もちろん、マイクロソフト日本法人のリストラ率が高い理由をまじめに分析したわけではないので断言はできない。しかし、少なくとも、勝間和代が言うような「日本は解雇しにくい」という話はマイクロソフトのリストラの実態を見るだけでもあまり信用できない。日本国民はそういう財界発の怪しげな情報操作に何度も何度も騙されてきたことをもっと顧みるべきだと思う。