2014年04月23日

アベちゃんが冥界から呼び戻す「残業代ゼロ法案」の亡霊

1 ニュース報道
 ヤツが墓場から甦る!長いが新聞報道を引用する。長いのでこの項目は読み飛ばしてもよいです。
「残業代ゼロ」一般社員も 産業競争力会議が提言へ 朝日新聞2014年4月22日
 政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討する。仕事の成果などで賃金が決まる一方、法律で定める労働時間より働いても「残業代ゼロ」になったり、長時間労働の温床になったりするおそれがある。
 民間議員の長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事らがまとめ、22日夕に開かれる経済財政諮問会議との合同会議に提言する方向で調整している。6月に改訂する安倍政権の成長戦略に盛り込むことを検討する。
〜中略〜
 対象として、年収が1千万円以上など高収入の社員のほか、高収入でなくても労働組合との合意で認められた社員を検討する。いずれも社員本人の同意を前提にするという。また、当初は従業員の過半数が入る労組がある企業に限り、新入社員などは対象から外す。

2 もう一度残業代の基礎をおさらい
 我が日本国は、労働基準法により、労働者の労働時間を週40時間、一日8時間に限定している。意外と知られていないが、これを超えて働かせるのは刑罰が定められた犯罪である。
 これを超えて労働者を働かせることができるのは、災害など臨時の必要がある場合か、職場で残業時間の上限を定めた適法な三六協定(さぶろく協定。労基法36条で定められているのでそう言う。)を定めたなど限定された場合であり、これも意外と知られていないが、政府の基準では月あたりの法廷時間外労働の上限時間は45時間である(リンク先はPDFなので注意。「時間外労働の限度に関する基準」。ただし強制力がないので実際は長時間残業が野放しになっている)。
 そして、あまり語られない残業代の最大の特徴は、月給制だろうとなんだろうと、法所定の計算により1時間当たりの時給単価(基礎時給)を割り出し、基礎時給に割増率を掛けた金額との関係で法定外残業時間に正比例して支払われるということである。しかも、基礎時給計算から除外される賃金も厳しく制限されている。
 基礎時給の計算方法については、以前、ワタミの賃金を例にとって解説したことがあるので、興味がある人はそちらをご覧頂きたい。→「離職率は高くないというワタミの新卒賃金を考える」
 残業代の未払ももちろん犯罪であり、労働者が訴訟を提起した場合は、裁判所は使用者に懲罰的な付加金を命じることができる。労基法の付加金制度は日本の法制度の中では裁判所が民事的な制裁金を科せる珍しい制度である。
 このように、使用者が脱法できないように何重にも規制がかけられているのが法定外残業、深夜早朝労働、法定休日労働なのであり、それでもサービス残業が横行しているのが今の日本の現状なのである。
 今でも、「管理監督者制度」という法定時間外割増賃金を払わなくてよい制度があるが、適用要件は非常に厳しい。このブログを読んでいるほとんどの人には適用できないと思って差し支えない。感覚的には「マクドの店長くらいでは適用されない」と覚えておけば良いだろう。企業の中間管理職になった途端、残業代がつかなくなり、手取りが減る話はよく聞くが、ほとんどの事例で違法だと思って良い。
 また、「裁量労働制」という制度もあるが、この制度も適用要件が非常に厳しい上、あくまで労働時間を「みなす」制度であり、みなされる労働時間が法定労働時間を超える場合は、当然、残業代が支払われる。この制度も脱法的運用が疑われており、疑念がある人は、一度、日本労働弁護団の弁護士に相談した方が良いだろう。

3 一度は葬られた「残業代ゼロ法案」
 このように、払わなければならない残業代を払ってこなかったのが日本の経営者たちであり、その総本山が日本経団連である。日本経団連はそれでも飽き足らず、2005年に「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表して以降、場合によっては年収400万円以上の労働者について適用される残業代ゼロ法案を強力に推進し、第一次安倍政権のときに、ついに法案化まで漕ぎ着けた。彼らの王道楽土(労働者の地獄)が訪れようとしていた・・・(このあたりの経緯は手前味噌ながら『POSSE』2220号の拙稿がフォローしている)。
 この残業代ゼロ法案の凄まじさは、労働時間を「みなす」制度すら放棄し、一定以上の年収がある労働者について、賃金と労働時間(残業時間)の対応関係を完全に切り離そうとする点にあった。この法案が「残業代ゼロ法案」であることはもちろんだが、「過労死促進法案」の異名があったのは周知の事実である。
 この法案は、首相・アベちゃんの下で法案化され、国会提出直前まで行ったが、国民世論の激しい反発に遭い、結局、国会で審議すらできずに葬られ「成仏」した。

4 死の会議・産業競争力会議

(1)トップはまたしてもアベちゃん
 しかしここへ来て、成仏したはずの残業代ゼロ法案を冥界から呼び戻そうとする人々がうごめきはじめた。主導している「産業競争力会議」は歴とした政府機関である。会議の名簿を政府のHPから取得してこのエントリの最後に付けておいたが、またしても、トップはアベちゃんである。この人、本当に懲りないね。産業競争力会議は、残業代ゼロ法案の他にも、今、国会に提出されている労働者派遣法改悪法案の主導するなど(この法案も要注意である。詳細は佐々木亮弁護士の「派遣労働の不安定さの理由と派遣法改正案が持つ危険性」参照)、この間の国民世論の反発でやっと(ほんの少しだけ)まともになった労働法制を、ふたたび地獄に引きずり落とそうとする「死の会議」である。
(2)口火を切ったのは「アリナミンでおなじみの武田薬品」社長
 今回、残業代ゼロ法案議論の口火を切ったのは武田薬品工業社長の長谷川閑史である。この会社は先日、糖尿病の薬「アクトス」の発ガン性リスクを隠していたことで、米国で6200億円の巨額賠償を命じられたばかりだが、一般消費者向けの主力商品は言わずと知れた「アリナミン」である。そうか!労働者が残業代ゼロ法でヘトヘトに疲れれば、アリナミンが沢山売れるかもしれない。さらに疲労が増せば、消費者がグレードアップしてEXゴールドにしてくれるかもね!
 筆者は栄養ドリンクが苦手なのでもともとほとんど買ったことはないが、上記報道に接し、アリナミンだけは絶対に買うまいと固く誓った。もうすぐ5月1日のメーデーだが、連合も、全労連も、全労協も、今年のスローガンは「万国の労働者は団結してアリナミンを不買せよ」でいいんじゃないだろうか。
(3)学者の皮を被ったパソナ会長の竹中平蔵
 政府作成の産業競争力会議の名簿では、竹中平蔵は慶応大学教授となっているが、政府にしろ、マスコミにしろ、この御仁をいつまで学者として扱う気なのだろうか。竹中は2009年に人材派遣会社のパソナの取締役会長に就任しており、少なくともその後、辞任したという報道はない。パソナは、残業代ゼロ法案が成立すれば、主力商材たる派遣社員の賃金を大幅にカットできる可能性がある。バリバリの利害関係者である。生身の人間を中間搾取して儲けている会社の関係者が残業代ゼロ法案を推進する会議の議員をやっているなんて、どういうブラック・ジョークなんだろうか。

5 まとめ
 ところで、アベちゃんも、賃金が上がらないと景気回復しないって、言ってなかったっけ?アベちゃんは、賃金を切り下げ、労働時間を増やすような法律作って、景気が回復すると本気で思っているのだろうか。こういう矛盾することを、政府にごり押しして自分たちだけ儲けようとするのが、今の財界中枢であり、日本経団連である。しかも、前回で懲りず、むしろ、適用される労働者を大幅に拡大しようとしているようである。最大限の批判を加えて、労働者派遣法改悪案に加え、残業代ゼロ法案をもう一度「成仏」させ、選挙でも自民党にお灸を据え、二度と甦らないようにする必要があると思う次第。

産業競争力会議 議員名簿(平成25年1月23日現在)
議長   安倍 晋三 内閣総理大臣
議長代理 麻生 太郎 副総理
副議長  甘利  明 経済再生担当大臣兼内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
副議長  菅  義偉 内閣官房長官
副議長  茂木 敏充 経済産業大臣
議員   山本 一太 内閣府特命担当大臣(科学技術政策)
議員   稲田 朋美 内閣府特命担当大臣(規制改革)
議員   秋山 咲恵 株式会社サキコーポレーション代表取締役社長
議員   岡  素之 住友商事株式会社 相談役
議員   榊原 定征 東レ株式会社代表取締役 取締役会長
議員   坂根 正弘 コマツ取締役会長
議員   佐藤 康博 株式会社みずほフィナンシャルグループ取締役社長 グループCEO
議員   竹中 平蔵 慶應義塾大学総合政策学部教授
議員   新浪 剛史 株式会社ローソン代表取締役社長CEO
議員   橋本 和仁 東京大学大学院工学系研究科教授
議員   長谷川 閑史 武田薬品工業株式会社代表取締役社長
議員   三木谷 浩史 楽天株式会社代表取締役会長兼社長
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2014年02月25日

NHK会長が理事の辞表を預かることの意味

 NHK会長の籾井勝人が相変わらず物議を醸し続けている。今度は、NHKの理事全員の辞表を預かっていたというのだ。
NHK理事10人全員「辞表出した」 国会で次々答弁 朝日新聞 2014年2月25日11時16分
NHKの籾井勝人会長が就任後、10人の理事全員に日付欄を空白にした辞表を提出させていたことが25日、わかった。この日午前の衆院総務委員会に参考人として招かれた理事10人が提出を認めた。理事の任期満了前も罷免(ひめん)できるようにし、会長の人事権を強める狙いがあるとみられる。

 衆院総務委で福田昭夫氏(民主)の質問に理事10人が辞表提出を認めた。籾井氏は当初、人事案件を理由に答えなかったが、理事の答弁後は「各理事は事実をそのまま述べた。それはそれでけっこう。私がどう思うかは別問題」と述べた。

NHKの役員の役割
 上記の記事だけでは分かりにくいので、NHKの会長と理事の関係を調べた。NHKの業務執行体制は端からは非常に分かりにくいのだが、経営委員会が執行機関議決機関(重要事項の意思決定はここでする。会社でいえば取締役会のようなものか)であり、会長は経営委員会を総理し、NHKを代表する。会長、副会長、理事の集合体である「理事会」は重要事項を審議し(議決権はないようだ)、個別の理事は会長の下で、部分的にNHKを代表する権限を持ったり、会長・副会長の業務を補佐し業務を掌理する立場のようだ。
放送法
(役員)
第四十九条  協会に、役員として、経営委員会の委員のほか、会長一人、副会長一人及び理事七人以上十人以内を置く。
(理事会)
第五十条  会長、副会長及び理事をもつて理事会を構成する。
2  理事会は、定款の定めるところにより、協会の重要業務の執行について審議する。
(会長等)
第五十一条  会長は、協会を代表し、経営委員会の定めるところに従い、その業務を総理する。
2  副会長は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代行し、会長が欠員のときはその職務を行う。
3  理事は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長及び副会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長及び副会長に事故があるときはその職務を代行し、会長及び副会長が欠員のときはその職務を行う。
4  会長、副会長及び理事は、協会に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに、当該事実を監査委員に報告しなければならない。
日本放送協会定款(リンク先はPDFなので注意)
(理事会)
第43条
会長、副会長及び理事をもって理事会を構成する。
2 理事会は、次の事項を審議する。ただし、定例に属する事項及び会長が軽微と認めた事項については、この限りでない。
(1) 第13条第1項第1号に掲げる経営委員会が議決する事項
(2) 第66条第2項の規定により経営委員会の同意を得る事項(第67条第2項において準用する場合を含む。)
(3) 理事会の運営に関する規程
(4) その他会長が特に必要と認めた事項
 ホームページで経営委員の顔ぶれを見ると(こちらを参照)、ほとんどがいわゆる「有識者」であるのに対し、より業務に近い理事の顔ぶれを見ると(こちらを参照)、生え抜きばかりであることが分かる。

会長は理事を罷免できるのか
 まず、理事の任命に関しては放送法52条3項で「副会長及び理事は、経営委員会の同意を得て、会長が任命する。」とされており、そもそも、会長の一存で任命できるものではない。そして、理事の罷免については放送法で以下のようになっている。
第五十四条  経営委員会又は会長は、それぞれ第五十二条第一項から第三項までの規定により任命した役員が同条第四項において準用する第三十一条第三項各号のいずれかに該当するに至つたときは、当該役員が同項第六号の事業者又はその団体のうち協会がその構成員であるものの役員となつたことにより同項第六号又は第七号に該当するに至つた場合を除くほか、これを罷免しなければならない。
第五十五条  1項略
2  会長は、副会長若しくは理事が職務執行の任にたえないと認めるとき、又は副会長若しくは理事に職務上の義務違反その他副会長若しくは理事たるに適しない非行があると認めるときは、経営委員会の同意を得て、これを罷免することができる。
 要するに、会長が理事を罷免できるのは、(1)理事が下記の放送法第31条3項各号(一部読み替え規定あり)に該当する場合、(2)理事が職務執行の任にたえないと認めるときもしくは理事たるに適しない非行があるときに経営委員会の同意を得て罷免する場合だけであり、逆に言えば、それ以外の場合に、会長が理事を勝手に罷免できないのである。これを裏返せば(追記:理事の側から見れば)、会長との関係で、理事はそれだけ身分を保障されている、ということになる。
放送法31条
(中略)
3  次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
一  禁錮以上の刑に処せられた者
二  国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三  国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて非常勤のものを除く。)
四  政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
五  放送用の送信機若しくは放送受信用の受信機の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わずこれと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下この条において同じ。)若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
六  放送事業者、第百五十二条第二項に規定する有料放送管理事業者、第百六十条に規定する認定放送持株会社若しくは新聞社、通信社その他ニュース若しくは情報の頒布を業とする事業者又はこれらの事業者が法人であるときはその役員若しくは職員若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者
七  前二号に掲げる事業者の団体の役員

脱法行為許すまじ
 そうであるにも関わらず、会長が理事に対して日付空欄の辞表を書かせることには、どういう意味があるのか。
 これは、会長からは罷免できないものを「理事が勝手に辞めた」という体裁をとることで、脱法的に離職に追い込むことにある。もちろん、実際にそのようなことが実際に可能かは疑問がなくはないし、勝手に辞めさせられたことになった理事が裁判でも起こせば、大いに論点になるだろう。しかし、理事たちは、自分で辞表を書いてしまった負い目があるのに、訴訟までやって理事の座を守ろうとするだろうか?それは、まず、ないことだろう。日付白紙の辞表を預かるということは、そのように、法的に争われたら効果に疑問があるが実際には法的に争うことなんか(ほぼ)できない実態を前提に、「オレが辞表を預かっていて、いつでも「〜〜理事は自らの意思で辞任しました」と発表できるんだから、オレの言うこと聞けよ」という露骨な恫喝なのであり、放送法の仕組みを脱法する悪質な行為だ。朝日新聞がいうような「会長の人事権を強める狙い」などという生やさしい話ではないのである。
 そして、籾井勝人が就任時に「「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない。国際放送にはそういうニュアンスがある」と言ったことは公知の事実であり、実際の現場の職務により近い理事の独立性を脱法的に奪うことで、放送現場に介入していくことは想像に難くないのである。
 こんな暴挙は、絶対に、許してはならない。

2014.2.25追記
 毎日新聞で下記のような記事を見つけた。筆者は、個人的には抗議しようと思う。
NHK:半沢直樹より面白い!? 籾井会長の“剛腕”ぶり 毎日新聞2014年02月25日15時17分(最終更新 02月25日 15時33分)
 「今直ちに電話とファクスで籾井会長解任を求める声をNHKに集中しよう。これから1〜2週間で何万人もにやってもらいたい。声が力になる。声の民主主義だ」。東京都内で22日に開かれた、市民の立場からNHK問題を考える緊急集会で醍醐聡東大名誉教授が訴えた。集会には全国から市民団体や放送関係者ら約200人が参加。醍醐氏がNHK窓口電話(0570・066・066)を紹介すると、拍手がわき起こった。

2014.2.26追記
 今日は下記のごとき発言をしたらしい。ソレナンテブラック企業?しかも、民間で勝手にやってるのと、それが放送法で縛られたNHKでもやっていいかどうかは全く別次元の話であるはずだが・・・・。
辞表提出の要求「一般社会ではよくある」 NHK会長 2014/2/26 11:21 日経新聞(共同通信配信)
 籾井勝人NHK会長は26日の衆院予算委員会の分科会で、理事に辞職届を書くよう求めたことについて「辞表を預かったことで萎縮するとは思わない。一般社会ではよくある」と述べ、問題はないとの認識を示した。
posted by ナベテル at 18:18| Comment(28) | TrackBack(1) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月13日

安倍の安倍による安倍のための憲法解釈

 安倍首相が国会答弁で立憲主義を否定する発言をしたという。
首相、立憲主義を否定 解釈改憲「最高責任者は私」(東京新聞2014年2月13日)
 安倍晋三首相は十二日の衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べた。憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相の発言は、それを覆して自ら解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため、政府を縛る憲法の立憲主義の否定になる。 

 首相は集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について、「(内閣法制局の議論の)積み上げのままで行くなら、そもそも会議を作る必要はない」と指摘した。

 政府はこれまで、集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法九条から「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈し、一貫して禁じてきた。

 憲法の文言には確かに幅があり、その範囲内での解釈のずれというのはあり得る、とされる。学術的に「憲法の変遷」などともいうようだ(実はそのことをちゃんと勉強してない)。しかし、憲法は国民が国家権力という凶暴なバケモノに対して科した“拘束具”であり、憲法解釈が憲法の文言解釈の問題である以上、権力者が勝手に文言を離れた解釈をすることはあり得ない。憲法で「黒」と書いてあるものを解釈で「白」とすることはできないのだ。
 憲法9条が集団的自衛権を否定しているのは、まさにこのレベルの話で、日米安保を推進し、自衛隊強化を推進してきた歴代自民党政権ですら、集団的自衛権(典型例はアメリカ軍が攻撃を受けたら自衛隊が参戦するということである)は憲法上行使できないとしてきたのだ。
 また、解釈上許されないものを、内閣が勝手に表明して、衆院選、参院選で勝ったからといって、解釈を変更できるものでもない。憲法を変えたいのなら、所定の手続による憲法改正の国民投票(憲法96条)をしなければならない。憲法というのはそういうものだし、憲法まで崇高な話を持ち出さなくても、ルール一般がそういうものだろう。野球で巨人が何回連続リーグ優勝しても、巨人だけで勝手に「野球は三角ベースとする」とはできないのである。

ついに憲法自体を破壊し始めた安倍晋三
 安倍晋三の上記発言は、このような憲法の解釈を一切無視し「憲法の解釈は、憲法の解釈上、オレが決めることができる。ソースはオレ。」と言っているに等しい。しかし、文言上無理だと言われいている憲法解釈を、時の政権の勝手な判断でOKとできると言うことが、どれだけ危険な発言か、皆さんよく考えて欲しい。例えば憲法で言う「国民」について、時の政権が「ただし生活保護受給者は除く」「ただし非正規労働者は除く」「ただし後期高齢者は除く」などと勝手に解釈し、人権を剥奪して、強制収容所送りにすることだって可能だろう。安倍晋三の発言は、まさにその類のものであり、国民が憲法という拘束具を権力者にはめて、暴走をストップしようとする立憲主義そのものの否定であり、独裁者の発想そのものである。また、安倍晋三を支持するみなさんは、そのようなオールマイティーの権力を、「ルーピー鳩山」のごとき人物が手にしたときに何が起こるのかを考えてみればよいのではないか。
 思い起こせば、安倍政権は発足直後から、改憲手続を定めた憲法96条を緩和しようだの、法律で集団的自衛権を認めようだの、憲法をネグレクトしてきた。安倍政権がこういうセコイ迂回路を考えざるを得ないのも、実は、国民が今の憲法を支持しているからでもある。いよいよ、安倍晋三の本質が明らかになってきた上記発言、決して許してはならない。そして、昨年5月に憲法96条改憲が頓挫したように、国民世論が反発すれば、安倍晋三の危険な発言を潰すことも十分に可能なことだ。右翼も、左翼も、中道も、高齢者も、若者も、みんなで批判しよう。
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2014年02月05日

NHK発の毒電波が視聴者の皆様の受信料によって支えられている現実

 安倍晋三の肝いりでNHKの経営委員になった長谷川三千子、百田尚樹や、新会長となった籾井勝人が物議を醸し続けている。筆者は、公人の政治的な発言は党派に偏るものでない限り許されるべきだと考えているが、この人たちの発言はそういうレベルのものではない。虚偽と偏狭に満ちあふれ、公的な重責を担うにふさわしくない。

百田尚樹
 ツイッターのまとめがあるので逐一読みたい人はどうぞ。「南京大虐殺はなかった」、安倍首相の靖国神社参拝について「総理に参拝をしていただきたいと希望を述べた」事実、経営委員になってからも、市民のツイッターでの批判に対して「アホ」と言って憚らない。
http://matome.naver.jp/odai/2138403790714522501
 しかし、南京大虐殺については、規模について学術的な見解の相違はあっても、それ自体がなかったという見解はおよそ通用しない。嘘である。また、総理大臣が公用車を使って「内閣総理大臣」と記帳して靖国神社に参拝することが憲法が定める政教分離との関係で重大な問題を孕んでいることも公知の事実である。公的かつ重大な職務にある者が自らの地位と行動について批判されて「アホ」などと公に発言するのは品性下劣としか言いようがない。
 筆者が百田尚樹の発言で最も許せないのはこれである。

 憲法9条は「平和憲法」というくらいで、戦争を起こさないためのものであり、戦争が起こったときにそれでただちにどうこうなるものではない。我々日本国民は、不断の努力によって、平和を保持し続けなければならない(戦争を起こさないように平和を作り出さなければならない)のである。そんなことは誰だって理解できるのに、「9条教」の「信者」を前線に送れ、などというのだ。「戦争が起きたら指導者を前線に送れ」というのなら分かるが、百田尚樹の議論は、自ら、近隣諸国を挑発する虚偽や妄想をばらまく一方で、国民の一部に「非国民」のレッテルを貼って排撃するに等しく、質が悪い。

長谷川三千子
 この人の発言ももはや言うまでもないほど有名になった。
火元の2014.1.6産経新聞の記事「年頭にあたり 「あたり前」を以て人口減を制す」
実はこうした「性別役割分担」は、哺乳動物の一員である人間にとって、きわめて自然なものなのです。妊娠、出産、育児は圧倒的に女性の方に負担がかかりますから、生活の糧をかせぐ仕事は男性が主役となるのが合理的です。ことに人間の女性は出産可能期間が限られていますから、その時期の女性を家庭外の仕事にかり出してしまうと、出生率は激減するのが当然です。そして、昭和47年のいわゆる「男女雇用機会均等法」以来、政府、行政は一貫してその方向へと「個人の生き方」に干渉してきたのです。政府も行政も今こそ、その誤りを反省して方向を転ずべきでしょう。それなしには日本は確実にほろぶのです。

火をつけた2014.1.28朝日新聞の記事「女は家で育児が合理的」 NHK経営委員コラムに波紋」

 自分が大学教授までやっておきながら、他の女性には家に入って育児をしてろ、というのは、どういう神経なのだろうか。自分が苦労したというのなら、後輩女性たちが働きながら子育てをする苦労をなるべく軽減するべきなのではないだろうか。先週の「週刊金曜日」の記事によると、この人は、経営委員になってから、国会であった「福島瑞穂を囲む女性の会」みたいのに単独で乗り込んで、笑みを浮かべながらとうとうと自説を展開したそうである。ひょっとしたら、精神的な痛みを感じないサイボーグ的なメンタリティの持ち主なのかもしれない。
 そしてさらに、新たな発言が飛び出した。
2014.2.5毎日新聞:NHK経営委員:新聞社拳銃自殺事件を礼賛
「右翼団体「大悲会」の野村秋介元会長が、自身の政治団体「風の会」を週刊朝日のイラストで「虱(しらみ)の党」とやゆされたとして抗議。1993年10月20日、朝日新聞東京本社15階応接室で拳銃自殺を図り、死亡した。以後、同年の文芸春秋社長宅発砲事件など言論テロが続いた。」という野村秋介について、没後20周年の追悼文集に寄稿し、「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」と述べ、さらに野村の行為によって「わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神(あきつみかみ)となられたのである」と書いたというのだ。
 言論の自由に対して「自爆テロ」で応じた人物の追悼文集に寄稿すること自体が問題だし、その人物を礼賛し、その行為によって日本国憲法下の象徴天皇制自体否定するという、論理が飛躍しすぎていてまともなコメントが不能な言論を展開している。それにしても、言論に対するテロを礼賛する人物が言論機関の経営委員をやっているというのはどういう皮肉なんだろうか。

籾井勝人
 この人は経営委員ではなくNHKの会長になった人だが、安倍政権の差し金と噂されている。会長は経営委員会で選出されることになっている。そして、籾井は、就任会見で旧日本軍の従軍慰安婦問題について「どこの国にもあった」などと暴言を吐き、さらに「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない」などと、NHKが安倍政権の大本営発表化することを宣言したのである。

視聴者の皆様の受信料によって支えられています

 このような品性下劣で、虚偽、妄想を公の場で並べ立てる人物たちの報酬は、NHK視聴者の皆様の受信料によって支えられている。ナンボのもんかと思って調べてみたら、非常勤の経営委員の報酬は年額495万3600円だそうである。
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/about/pay.html
 会長の報酬は決定方法だけ基準が公表されていて、実額がホームページで公表されていない。
PDFの「基準」→http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/kyuyo/pdf/kijyun-top.pdf
 そもそも、NHKの会長の報酬をホームページで公表しないこと事態が不当だが、新聞報道によると、常勤の経営委員長と同額の年額3092万円のようである。
 虚偽、妄想をばらまき、近隣諸国を挑発しながら、歴代自民党政権でももっとも危険な安倍政権の大本営発表化を公言するような役員らの報酬のために払う受信料などあるのだろうか。このような人物らは、公共放送であり、報道機関でもあるNHKからは即刻追放すべきである。

2014.2.5追記

 長谷川三千子の追悼文の原文なるものがネット上で出回っている。これが本物だとすれば、やはり、かなりひどい内容だと思う。

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2014年02月03日

「橋下氏が市長に再選されても任期が変わらない」について調べた

 筆者は弁護士だが、市長が辞職してまた市長選に出ると、当選しても任期が当初の通りとなる、というのを記憶していなかった(言われると、名古屋の河村氏だか阿久根の竹原氏だかで、過去にそういうことが問題になったことがある気がする)。
 この点について、新聞の書き方を見ていてもどうもスッとしないので、自分で調べてみた。法律の条文を見ると以下のようになっている。

条文の確認
地方自治法
第百四十条  普通地方公共団体の長の任期は、四年とする。
○2  前項の任期の起算については、公職選挙法第二百五十九条及び第二百五十九条の二の定めるところによる。

 で、公選法の該当部分には下記のような記載がある。
公職選挙法
(地方公共団体の長の任期の起算)
第二百五十九条  地方公共団体の長の任期は、選挙の日から起算する。但し、任期満了に因る選挙が地方公共団体の長の任期満了の日前に行われた場合において、前任の長が任期満了の日まで在任したときは前任者の任期満了の日の翌日から、選挙の期日後に前任の長が欠けたときはその欠けた日の翌日から、それぞれ起算する。
(地方公共団体の長の任期の起算の特例)
第二百五十九条の二  地方公共団体の長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあつたことにより告示された地方公共団体の長の選挙において当選人となつたときは、その者の任期については、当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあつたことにより告示された選挙がなかつたものとみなして前条の規定を適用する。

 なるほど、確かにそう書いてある。結局、公選法の259条の2により、橋下氏が当選した場合は、任期が最初の当選のときから4年、ということになるんですな。ここで重要なのは、無投票かどうかは関係ない、ということ。橋下氏が当選すれば任期は今の任期と通算されるし、そうじゃ無い人が当選した場合は新たに4年となるのだ。我こそは、と思う人は立候補して、橋下氏の悪政をどんどん批判すればよいと思う。

何故こういう制度なのか
 制度趣旨としては、現職首長による選挙制度濫用の防止、ということで予想がつくところだが、一応調べてみた。
 普通地方公共団体の長の職に在るものが、任期の満了を待たずに退職の申出をした場合は、かつては、退職の申立があったことに因り告示された選挙において候補者となることができないとしていたのを改め(昭和37年改正前の公選法87条の2削除)、普通地方公共団体の長が任期満了をまたずに退職を申し出、当該退職の申立があったことに因り告示された選挙において立候補できることと氏、その場合、再び当選人となってもその者の任期については、退職前の在職期間に通算する(当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあったことにより告示された選挙がなかったものとみなされる)こととなっている(公選法259条の2)。つまり、普通地方公共団体の長が、たとえば、議会との間が円滑に行かない場合に、不信任決議を受けて議会解散で住民の批判をまつ方式の他に、自ら自発的に退職して信を住民に問うことができる道が開かれたが、その場合は、任期四年の特例となる。
 したがって、退職の申し立てがあったことに因り告示された選挙は、退職を申し出たものについては信任投票、新たに立候補した者については、後任者の選挙という二つの内容を有しているもので、退職を申し出た者が再び当選人となった場合は、前職の残任期間であり、新たに立候補した者が当選人となった場合は、その任期は通常の任期の四年である。(『新版逐条地方自治法第1次改訂版』松本英昭 学陽書房)

 念のため公選法の注釈書も参照してみたが、ほとんど同じ事が書いてあった。
 もともと、辞職の場合の再選挙出馬が禁止されていたことになる。それがいわば規制緩和されて、再選出馬はできるけど、任期は変わらないよ、という制度になったのだ。注釈書に制度趣旨は明記されていないが、条文の体裁からすると、予想したとおり、現職市長による選挙制度の乱用防止なのではないだろうか。
 橋下氏が今日辞職して、大阪市長の再選挙に出馬した場合は、その選挙は、橋下氏にとっては信任投票となるのだから、単に勝ったかどうかだけでなく、前回市長選挙と比べて表が増えるのか、減るのかが重要な要素となるとみるべきだろう。
posted by ナベテル at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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