2009年12月03日

おまとめローンは正しい選択か(2)

 この話題、(1)からの間が空いてしまった。

 おまとめローンをしてしまって失敗する二つめの例は自宅を持っている方がおまとめローンのために自宅に抵当権をつけてしまう例だ。
 サラ金や信販会社からの借り入れをしている場合、多くの場合、多数の業者から無担保でかなり巨額のお金(多いと総額が1000万円近い方もいる)を借りている場合もある。ポイントは無担保=自宅に抵当権が設定されていない、ということ。

 このように無担保の借り入れが多数ある場合に「個人再生」という制度を使える場合がある。これは、民事再生法という法律を使うのだが、自宅の住宅ローンが残っている場合でも、住宅ローンは今まで通り返済しつつ(場合によっては住宅ローンの繰り延べすらできる)、無担保の借り入れは最大で5分の1程度まで切り下げて、3年〜5程度で元本だけを分割して返済すれば残りの借金は免除される、という制度だ。もちろん、それなりに収入がある人が対象の制度なので、使える人は限定されるのだが、ある意味究極の債務整理の方法と言えるかもしれない。

 そして、おまとめローンを利用しようとして審査が通る人の中には弁護士に依頼して個人再生の手続を取れば、自宅を維持したまま債務整理をできる方も多いように思う。というのは、おまとめローンをやっている金融機関が顧客にしたいと思われる層(多額の借金、それなりに安定した収入、担保にできる不動産の存在という3要件がある人)と、個人再生が使う意義が大きい層(多額の借り入れ、それなりに安定した収入、守るべき自宅の存在という3要件がある人)は実はかなり重なっているのだ。

 そして問題なのは、金融機関でおまとめローンをした際に、自宅に抵当権をつけると個人再生を使う意味が無くなってしまう場合がある、ということだ。というのは、住宅ローン以外の借り入れで自宅に抵当権が付いていると(要するにおまとめローンで担保を取られていると)、その債務(おまとめローンの債務)は個人再生の手続から除外されてしまい債務の切り下げの対象にならない。これはすなわち、利息もカットされず、そのまま返済を続けなければならない、ということだ。おまとめローンのときに自宅に担保をつけられると、個人再生という「最終兵器」を使う道を阻まれてしまう場合がある、ということなのだ。実際、僕が相談に乗ってきた方でも、おまとめローンが邪魔をして苦境に立たされてしまった方はいる。

 そして、もう一度強調したいのは、おまとめローンをやっているような金融機関では、おそらく、個人再生手続が取れる可能性についてはあまり教えてくれない可能性が高い、ということだ。先に書いたように、個人再生を使える人と、おまとめローンを使える人はある程度重なっているように思う。銀行は顧客を獲得しないと商売にならないのだから、商売敵の制度を教えることは期待できないのだ。

 そして、おまとめローンと個人再生の両方が使える人にとって、どっちを利用した方が得か。それはケースバイケースなので一概には言えないけど、個人再生の手続を取った方が遙かに楽なケースもかなりあると思う。あくまでケースバイケースだが。

 というわけで、おまとめローンというのは決してバラ色の制度ではない。そして、「銀行」と名の付いた金融機関が取り扱っているのに、法律の上限ギリギリの15%近くの利率で貸し出ししている例が多い。個人的には「担保取っておいてその高利率は何だ!」とイライラしてくる。こんな金融機関が「銀行」を名乗ることに違和感すら感じる。

 おまとめローンの利用を考えている方は、是非、「ご利用は計画的に」願いたい。


posted by ナベテル at 17:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 消費者問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月26日

「おまとめローン」は正しい選択か(1)

 ここ数年、債務整理の仕事をしていると、「星」だの「都会」だのの横文字が付いた銀行をはじめ、金融機関が「おまとめローン」で融資している例がある。

 おまとめローンというのは、例えばアイフルや武富士のようなサラ金(消費者金融などともいう)からの借り入れを銀行からの借り入れで「完済」し、あとは銀行からの借り入れ一本を返済していけば良く楽だし、利率が消費者金融より低いので消費者にはお得!というふれこみの制度だ。

 しかし、弁護士として関わっている債務整理では、おまとめローンをしてしまったばかりにかえって大損をしたり、自宅をうしなうことになってしまう場合がある。

 一つは、消費者金融で過払金が出ている場合。あるいは「おまとめローン」による返済で過払金が出ている場合だ。

 「グレーゾーン金利」というものがある。利息制限法で認められた年利15%(100万円以上)、18%(10万円以上)、20%(10万円未満)という利息と、旧貸金業規制法で定められていた年利29.2%(かつてはもっと高い時期もあった)の利息の間の金利の間の利息のことをいう。アイフルや武富士について言えば、かつては大体25〜29%の間くらいで貸付をしていた例が多い。そして、詳しい経緯は省くけど、最高裁判所の判例によってサラ金が消費者から取っていた「グレーゾーン金利」による利息は手続違反でほとんどが無効だということが宣言された。そこで、消費者が支払った「グレーゾーン金利」を利息に充当せずに、借り入れ元本に充当した場合、最終的にはお金の返しすぎになるのがいわゆる過払金だ。しかし、消費者金融から来る請求書や領収書にはグレーゾーン金利を前提とした借金残高が書かれているので、取引履歴をエクセルに入力して計算し直さないと、現在の正確な借金残高や過払い金の有無は分からない。

 前置きが長くなったけど、かつて一度でも「グレーゾーン金利」で借り入れをしたことがある場合、サラ金が標榜する額面額の借金を満額返済すると、額の大小はあれ、必ず過払金が出ることになる。

 「おまとめローン」の「おまとめローン」でサラ金等の借金を返済する場合、この「グレーゾーン金利」の再計算をやらずに、サラ金が勝手に標榜している額面額の「貸金残高」を前提に返済が行われている例がある。返済する必要がない幻の借金を「おまとめローン」で借りたお金で返している、ということだ。

 これは全くの無駄だし、「おまとめローン」の利息を返済しなければならないのでかえって損をしてしまう。それどころか、最近は大手まで含めてサラ金(消費者金融)の経営が怪しくなってきているので、過払金を回収できない場合も出てきてしまう。回収するのにも自分で訴訟等しない限り弁護士にお金を払わなければならない。

 しかし、こういう弊害について「おまとめローン」を実施している金融機関でどこまで親身に相談に乗っているのか極めて疑問だ。というより「おまとめローン」は後に述べるように弁護士による債務整理とは方針が相反する場合もある(矛盾する場合は弁護士に依頼する方が消費者のためになる場合が多い)ので、顧客を獲得しようとしている金融機関がこの問題を消費者に懇切丁寧に説明すると、消費者が「おまとめローン」をせずに弁護士に依頼して債務整理してしまう可能性が高い。金融機関にはそのような説明は期待できないのである。

・・・・(2)に続く


posted by ナベテル at 13:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費者問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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