2010年05月12日

抑止の前提となる中国脅威はあるのか(基地問題2)

 鳩山首相の沖縄訪問以来、にわかに活気づいている在日米軍の「抑止力」を巡る議論。ネット上では色々な議論が紹介されていて実に興味深い。自分の頭の体操もかねて、色々紹介してみたいと思う。多分、さらに3回位に分けて投稿する事になると思う。

脅威無ければ抑止不要
 当たり前の事だが、脅威がなければ抑止する必要もない。今、日本で言われる主な「脅威」は北朝鮮の脅威と中国の脅威だが、論点を絞るために中国脅威論だけ考察する。

 自衛隊は中国の「脅威」をどのように考えているのか。孫引きになるが、朝日新聞の記事に次のようなものがある。
「中国の侵攻」も想定 陸自計画判明、北方重視から転換
朝日新聞 2005年09月26日10時19分
引用元:http://udonenogure.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-849b.html
 防衛警備計画では北朝鮮、中国、ロシアを「脅威対象国」と認定。日本攻撃の可能性について、北朝鮮は「ある」、中国は「小さい」、ロシアは「極めて小さい」とし、「国家ではないテロ組織」による不法行為は可能性が「小さい」とされた。
 中国については(1)日中関係悪化や尖閣諸島周辺の資源問題が深刻化し、中国軍が同諸島周辺の権益確保を目的に同諸島などに上陸・侵攻(2)台湾の独立宣言などによって中台紛争が起き、介入する米軍を日本が支援したことから中国軍が在日米軍基地や自衛隊施設を攻撃――と想定。中国側が1個旅団規模 で離島などに上陸するケースや、弾道ミサイルや航空機による攻撃のほか、都市部へのゲリラ・特殊部隊(約2個大隊)の攻撃も想定している。

 元々のニュース源は「防衛警備計画」という陸上自衛隊の機密文書だ。自衛隊の対中認識が現れていると見てよいだろう。そして、中国の脅威と言っても@いわゆる島嶼防衛の問題、A台湾有事への対応が想定されているのであり、自衛隊でさえ、中国が沖縄本島やまして本土に攻めてくることは全く想定外なのだ。

島嶼防衛の現実性の検討
 @の島嶼防衛については、まず「島嶼」がどこの島なのかよく分からなかった(これはもっとネット上を探し回れば想定された島嶼が分かる可能性もある)。次に、中国が「島嶼」に実際に侵攻してくる現実的な可能性がどこに求められるのかよく分からなかった。また、極論(暴論かもしれないが)すれば、せいぜい「島嶼」の問題だ。小島のために中国と戦争するのかは、それ自体、かなり究極的な選択だろう。この問題でよく引き合いに出されるのは米軍がフィリピンから撤退した後に中国が南沙諸島の小島に建造物を建て、台湾が滑走路を造ったりしている件だが、ベトナム、中国、フィリピン、台湾はいずれも戦争になっていない。結局、「日本攻撃の可能性は小さい」という自衛隊の認識以外に確かなものはないように思われる。

台湾有事の検討

 Aの台湾有事については、台湾が独立する方向で急進化しない限り、中国の台湾侵攻はない、また台湾も戦争覚悟で独立する事はない、という議論が聴かれる。ネット上で見つけた代表的なものとして以下のものがある。

モジモジ君の日記。みたいな。「普天間基地県内移設に合理性は皆無」
そして、最近の中国政府が発している数々のシグナルを見る限り、「独立宣言しない限り軍事侵攻はない」ということであり、その意味で、イニシアティブは台 湾側が持っている。戦争したくなければ、独立宣言さえしなければいい。では、「独立宣言をしない」とはどういうことか。これは現に占領下に置かれている人々が行う分離独立闘争をしない、ということではない。台湾(中華民国)は台湾全土を実効支配しており、独自の政治組織を持ち、国際機関への加盟を阻まれている面は難儀しているとしても、政治・経済その他の面での国際的な交流も持っており、実質的に独立国として機能している。つまり、「独立宣言をしない」とは、現状の「実質的な独立状態を維持する」ということであり、中国政府の支配下に置かれてしまうのとは訳が違う。その意味で、チベットとはまったく異なる。

 中国が理性的である限り、台湾侵攻をする事はあり得ない、という議論は僕には非常に説得的に聞こえる。

中国は脅威ではない論
 さらに中国脅威論に対して最も強く対置されるのは「中国は脅威ではない」あるいは「中国を脅威にしてはいけない」という議論だろう。ネット上の有力な議論として以下のようなものがある。
日中防衛協調と沖縄米軍基地
2009年12月8日   田中 宇
 日本と中国は、自民党政権の末期から軍艦の相互訪問をやったり、中国の災害救援に日本の自衛隊艦を派遣したりと、目立たない形で防衛協調を進めて きた。今回の協調強化は、それをさらに進めるものだ。鳩山政権への批判中傷に余念がない対米従属至上主義の人々による猛反発があっても不思議ではないのだ が、「救難に関する共同訓練」は大したことではないと考えられたのか、騒ぎになっていない。
 しかし現実には、日本が中国と、軍どうしの合同演習や防衛交流を強めるほど、日本にとって中国は脅威ではなくなる。すでに北沢防衛相 は、中国防衛相の訪日を機に中国の雑誌「中国新聞週刊」のインタビューに応じ「日本は中国との関係を非常に大切にしている。わたしは、中国を日本の脅威と考えたことはない」と言っている。

 私見を述べると、結局、元々言われている「中国の脅威」のうち島嶼防衛についてはそんなに大げさな事と思えず、台湾有事も発声する可能性は低い。僕は中国を脅威とは思えないし、中国が多少乱暴者でも脅威に仕立て上げてはいけないと思っている。そのような考え方は、日本の最大輸出相手国がアメリカから中国に移っている今日、それこそ日本の「国益」を損なうことになると思うのだ。

 次回以降の予定は以下の通り。

なにがしかの脅威があるとして在沖海兵隊の存在は抑止力になるのか
海兵隊基地移転論と反対論
運動論
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2010年05月06日

基地問題であえて鳩山首相を評価する3つの理由(基地問題1)

 鳩山首相が沖縄訪問して以降、鳩山バッシングが一段と強まっている。5月退陣説まで出始めた。もちろん、鳩山首相が脱税していた点や小沢一郎に頭が上がらない点など、批判すべき点は沢山ある。しかし、米軍基地問題で鳩山首相を一方的に責めるのは間違っている、と僕は思う。むしろ、歴代の自民党の首相に比べれば百歩くらい前進しているのではないだろうか。

鳩山首相は何を言ったのか
 まず、鳩山首相は5月4日の仲井間知事との会談で何を喋ったのか。ジャーナリスト・岩上安身氏のツイッターでのつぶやきが要点をまとめてくれている。
続き。首相「普天間のことに関して申し上げれば、さまざま、例えば海外という話もなかったわけではありませんが、現実に、日米の同盟関係を考えた時に、また、近隣諸国との関係を考えた時に、必ずしもそれは、抑止力という観点からは難しいという思いになりました」。ついに鳩山首相、膝を屈す。
iwakamiyasumi
2010-05-05 02:23:38

続き。首相「となりますと県外、あるいは、ということで、いろいろと努力をしてきているところでございますが、すべてを県外ということはなかなか、現実問題として難しいということに直面をしております」
iwakamiyasumi
2010-05-05 02:24:55

続き。首相「一番大事なことは普天間の危険性の早急の除去ということ、ご負担をできる限り減らすように最大限努力することが一番重要と思っておりまして、パッケージとして果たせさせて頂くことで、沖縄の皆さま方にも、またご負担をお願いしなければならないなと、今日もまいった次第でございます」
iwakamiyasumi
2010-05-05 02:28:18

続き。首相「ただ県民の皆さん方のさまざまなお気持ちもおありだと思っておりますので、きょうは県民の皆さまのお気持ちをしっかりと受け止めさせていただく機会にしたいと思っております。住民の皆様方との対話集会も、名護の市長、宜野湾の市長とも、いろいろとお気持ちを学ばせて頂きれば」
iwakamiyasumi
2010-05-05 02:32:12

 さらに短くまとめると
@基地を海外移転しようにも、日米同盟、対中、対北朝鮮「抑止力」のことを考えると基地自体をなくすわけにはいかない
A基地の県外移設を考えたが普天間基地の機能の全ての移転は難しい
Bそうすると沖縄に負担をお願いしなければならない。
Cなので沖縄の気持ちを聴きたい。
ということだろうか。

鳩山首相を批判する代表的な例
 このような鳩山発言に対しては自民党の“私はつぶやかない”谷垣禎一氏がツイッターで敏感に反応した。
鳩山総理が初めて沖縄を訪問され、県内に基地を残すこと徳之島へ一部移転することを明らかにされました。これは明確な約束違反であり、県民、国民への裏切りです。普天間問題の解決法はガラス細工であることは分かっていたはずです。鳩山総理ばかりか、政権全体の責任も問うてまいりたいと思います。
Tanigaki_S
4:58 PM May 4th webから

 しかし「県民、国民への裏切り」を40年間ずっと続けてきたのは他ならぬ自民党だ。辺野古の新基地だって、沖縄に金をばらまいて黙らせれば何とか建設できると踏んだ自民党がアメリカと約束したものだ。ついにその締め付けが出来なくなって、自民党は選挙で負けて下野したのだ。こんな無責任な批判は類例がないのではないか。

 他にも鳩山首相の手際の悪さや公約違反を批判する言論は山ほどあるが、すぐに読めるのでよくまとまっているのは「極東ブログ」さんの「鳩山さんが首相であり続けることが国家安全保障上の問題」だろう。ここに書いてある個々の事実は至極ごもっともなのでいちいち引用はしない。読みたければ読んでいただきたい。
 しかし、米軍基地の撤去がそう簡単にできない事くらい、立場の違いを問わず、国民の共通見解だったのではないのか。今頃、鬼の首を取ったように批判するのはいただけない。鳩山首相の行動が右往左往するのが安全保障上の問題、というが、幸いにして、今の日本には切迫した安全保障上の問題はない。さらに言えば、歴代の自民党政権が基地問題にまじめに向き合った事などあるのだろうか。自民党は沖縄に辺野古の基地建設を押しつけることを決めたけど、地元の抵抗にあって、結局、建設できなかった。でも、だからといって代案をまじめに検討した事など無い。それでも、自民党の無能を声高に批判する意見はあまりなかった(だからこそ“私はつぶやかない”谷垣氏がツイッターでつけあがる余地があるのだ)。鳩山首相は今まで誰もやってこなかった超困難な課題に取り組んでいるから右往左往しているのではないのか。

あえて鳩山首相を評価する3つの点

 僕の立ち位置からすれば、沖縄に負担の提案をした鳩山首相の考えそれ自体は許し難いものだ。しかし、基地問題で鳩山首相を降板させるのは間違っていると思うので、あえて、応援する理由を挙げたいと思う。
 一つ目。少なくとも、日本の歴代首相の中でほとんど初めて、沖縄の基地問題に向き合おうとした事。これは特筆に値するし、あっちこっちで指摘されているが、すでにパンドラの箱は開いた。もうこの問題を無かったことにすることは出来ないし、放たれた火は巨大な炎になって消える事はない。さんざん無視されてきたこの問題を国政上の大問題に押し上げた鳩山首相の功績は評価すべきだ。
 二つ目。鳩山首相は歴代首相で初めて、沖縄に基地負担を「お願い」した。自民党はアメとムチで押しつけただけ。このスタンスの差は大きい。もちろん、沖縄は鳩山首相の「お願い」を思いっきり蹴っ飛ばせばよい。沖縄が引き受けなければ誰が引き受けるのか。あるいは誰も引き受けないのか。それは国民みんなで考える事だ。誰も引き受けなければアメリカに対して「やっぱダメでしたわ。」と交渉しなおす手もある。びびる必要はない。日本が自立し始めたら本当に困るのはアメリカなのだ。粘り強く交渉すれば必ず道は開けるし、もともと、政治的な綾で早期解決が出来る性質の問題ではない。
 三つ目。鳩山首相の発言が契機になって「抑止力」論という日米安保の本質に迫る問題が議論の俎上に上がってきた事だ。鳩山首相の発言は最終的には「抑止力」のために基地が必要だというものだ。昔は日米安保はソ連の魔の手を「抑止」して日本を守ってくれる、という立て付けだったが、ソ連崩壊後は、北朝鮮や中国というなんとも貧弱な相手やそもそも敵にすべきでない国が勝手に仮想敵国になってしまっている。そういう時代に日本が高い代償を払って得られる「抑止力」って何なのか。そんなもの必要なのか。そういう議論がすでに始まっている。「抑止力」が必要ないという結論が導けるなら日米安保を解消して基地を撤去する選択肢も出てくる。鳩山首相は、ソ連崩壊後も20年間思考停止していた「属国」日本が自分たちで自分たちの将来を考えるまたとない機会を提供したのだ。この機会、大事にしようではないか。
 
 次回、「抑止力」論についてちょっと考える予定。
posted by ナベテル at 02:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 社会・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月26日

橋下“新党”大阪維新の会の羊頭狗肉ぶり

 先日、橋下徹・大阪府知事が新党「大阪維新の会」を結成した。この政党には自民党出身の府議が多数参加して、マスコミでも大きな話題になっていた。
 国政レベルで政権政党から滑り落ちた自民党の議員が人気者の橋下府知事に「寄らば大樹」でくっつくのはそれはそれで滑稽だし、そういう人たちと一緒に新党を作ることに何の疑問もない橋下府知事の方もかなりの俗物に見えるのは僕だけなんだろうか。

 まあそれはさておき、新党を結成するからには当然、古巣の自民党は捨ててくるんだと思ってたら、仰天のニュースが流れた。

橋下“維新”府議はやジレンマ 自民が公認候補…党籍除名も

4月22日8時54分配信 産経新聞
 5月23日投開票の大阪市議補選福島区選挙区(欠員1)で、自民市議の長男で秘書の太田晶也氏(38)が出馬に意欲を示していることが21日、分かった。自民党府連に公認を求める方針。しかし自民の公認候補が立候補すると、戸惑うのは橋下徹・大阪府知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」に加わった自民党籍の議員たち。維新は独自候補の擁立を決めているが、自民府連幹部の中には「反党行為をした場合は除名もある」という厳しい意見もあり、関係者からは「究極の選択になる」との声があがっている。
〜中略〜
 維新にはこれまで30人の地方議員が加わっているが、ほとんどが自民出身で党籍を残したまま。自民党籍を持つ維新府議の1人は「過去の選挙では公認候補以外を応援して処分されなかった人もいる。仮に処分を考えているのなら釈然としない」と話す一方、別の府議は「できれば自民の公認候補を落とす選挙にはかかわりたくはない」と打ち明けた。

 
え?新党入ったのに自民党辞めてないの??


 古巣を辞めずに新しい政党に入れる、というのもある意味新鮮だが、記事にあるように新党参加者が自民党に刃向かえないのであれば、新党の意味はない。こういう人たちが「新党」だの「維新」を名乗るのは馬鹿げた話だ。

 理念無き新党ブームは中学生の時に一度見ている。でも、今振り返ってみれば、ブームの中心にいた殿様はとっとと引退して若隠居。ブームに乗って真っ先に自民党を飛び出した人は政党を転々とした末に首相になったがすでに政権末期症状。その頃出来た新党なんて一つも残らなかった。橋下新党も10年スパンでは同じ末路をたどるだろう。

 こういう風景は、もうたくさんなのだが。
posted by ナベテル at 00:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月08日

止めどない価格競争の果てに未来はあるのか

 値下げ競争の話が相変わらず活発だ。最近ネット上で見つけたニュースで気になったものを挙げると以下のようなものがある。
ZAKZAK 2010.3.20
“タダ”居酒屋が大人気…酒とタバコがタダ、そのワケ

 居酒屋といえば、料理は収支トントンで、ドリンクで儲けるというのが普通。それが、なぜ焼酎を全部タダにしてしまったのか。この賭けが当たったのか、こんなご時世にもかかわらず、店は連日大盛況の満員御礼で行列もできるほどの人気ぶりだというのだ。

 もちろん、安かろう悪かろうではなく、社長の出身地でもある北海道のこだわりの食材を自社トラックで配送、それによりイクラ、カニ、ホッケなどの美味しい海鮮が他の店よりも安く提供できるという本格派。普通の単品料理は大手チェーンの値段と同じレベルなのに食べ物は北海道産直のみ。たとえば、羅臼産直毛ガニが2000円。とてつもなく大きな羅臼産直ホッケは800円とまさに激安。

 ちょっとまえにおかきをただで出すお店の話があったが、これはおかきどころの話ではなくアルコールをただで振る舞っている。北海道産直品も激安だという。しかし、このニュースを見ていて感覚的に思うのは「いくらなんでも限界を超えてるだろ」ということ。誰かが泣きを見てひどい低賃金に甘んじないと、こういうシステムは成り立たないと思うのだ。誰が泣いているのかは分からないが、従業員は残業代をもらっているのか、トラックの運転手はちゃんと賃金を払ってもらっているのか、気になる。

 今日あたり、また牛丼の値下げ競争が始まった、というニュースも流れてきた。
ZAKZAK 2010.4.6
このままでは共倒れ!? 牛丼値下げ“チキンレース”行方

松屋を展開する「松屋フーズ」は5日、牛丼並盛りを320円から250円にする値下げキャンペーンを今月12日から23日まで実施すると発表した。

 「吉野家ホールディングス」も7日から13日まで、牛丼並盛り380円を270円に値下げする。すき家を運営する「ゼンショー」も9日から21日まで都市部の百数十店で、並盛りを250円にするキャンペーンを実施。250円のラインで3社が競合する。

 これなんかは労働者の悲鳴が聞こえてくるような錯覚を覚える。そして、この記事でも「このままでは共倒れ」という意見が紹介されている。

 ちょっと前に出たユニクロに関する記事でも同じ意見が紹介されていた。

庶民の味方か社会の破壊者か? ユニクロが招くデフレスパイラル“負”の連鎖

サイゾー3月18日(木) 11時25分配信 / 国内 - 社会
 川嶋氏はこう述べる。

「ユニクロの欠点は、何も育たないということ。人も産業も育てない。社内においても人材は使い捨て。05年に社長兼COOだった玉塚元一氏が事実上解任されたのと同じように、柳井社長について全力疾走できない社員は、辞めざるを得ない状況になるんです。生産においても、国内の工場ではコスト的に見合わないので、ほとんどが海外生産。でも、これだけ成長した今、国内工場を使って産業を育てていくことを考えてもいいんじゃないか」

 また、思わぬところに影響が出ることもある。前出の浜氏が語る。

「低価格が定着すると、例えば教会のバザーや障害者支援の活動などが犠牲になる恐れもあります。かつては、寄付されたものや障害者がつくったものが安い価格で販売されると人が集まったものですが、今は店頭で同じような価格のものが売られているので、人が集まらない。これでは福祉のための経済的な力も失われてしまうし、社会的意義のある事業も潰れてしまう恐れがあります」

 この流れが進めば、どんな事態が待ち受けているのだろうか?

「“そして誰もいなくなった”ということになるでしょうね。ものが買えない、生活できない。そうなったら、企業も全滅ですから、極端にいえば、みんな死に絶える。・・・

 250円の牛丼や900円のジーンズが何となくやばいもので、誰かが何処かで泣いていることは、みんなうすうす気付いている。こういう流れはどこかでストップしないと地域の経済もみんな崩壊してしまう。

 この負の連鎖を止めようと思うと、解決方法は賃金を上げるしかない。特に上げるべきなのは非正規の労働者の賃金だ。景気の浮揚のために労働者保護が必要なのだ。
 一方。それなりに所得のある者は安い物に飛びつかずそれなりの値段でそれなりの価値のある物をちゃんと買わなければいけない、ということなのかもしれない。値段が安すぎて直感的に「やばい」と感じた商品には気をつけようと思う。

 まとまり無い感想文だけど、終わり。
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2010年04月05日

最近また地域通貨の話題が増えてる?

 この週末、京都市内の平野部は気温も上がり、桜が満開でございました。僕はプライベートが異様に忙しく、ブログの更新すらままならない状況。プライベートのことはあまりブログに書かないので、ただですら少ない読者の人は間が空いてごめんなさい。

 で、今日も緩い話題。

 以前、地方公務員の給与の一部を地域通貨で払ったら色々良いんじゃないか、という話を書いた(「公務員の給与を地域経済活性に使えないか:2月6日の朝日新聞阿久根市の報道から考える」)。僕が地域通貨という言葉を知ったのは2000年代に入ってそんなに間もない頃だったと思うのだが、その後、この手の話題はかなり下火になっていた。

 僕は個人的には地域経済防衛のためのツールとしての地域通貨というものにずっと興味がある。そして、この大不況の下で地方の富はますます得体の知れない「誰か」に吸い上げられている。こういう状況を見ていると、ますます地域通貨の出番なのではないか、と漠然と思っている。漠然と思っているだけではあまりに能がないので、最近、短いブックレットから読んでみた。『地域通貨と地域自治』(西部忠 公人の友社)。この本によると、地域通貨の通貨としての特徴として
@民主主義的ー自主発行・自主運営
A地域主義的ー地域限定流通、国家通貨への非兌換
B非資本主義的ーゼロ・マイナス金利、ゼロサム原理
 
 また、地域通貨の通貨でない特徴として
@関係構築的
A水平関係的
B言語的

というのがあるそうだ。自分が発行したことがないから「へー」としか思わないけど、地域の中で富を循環させ、外に出さないためにはこういう仕組みは必要なのかもしれない。

 なんて、本を読んでいたところに、こういう記事が出てきた。
猫の大判、ちゃんと使えます 浅草で地域通貨が人気
朝日新聞2010年3月28日9時33分

 東京・浅草だけで使える「寛永通宝」や「大判」が人気だ。銀色に輝く大判は1枚950円で千円分の買い物が周辺の店で出来る。金色の寛永通宝は500円分。

 町おこしに各地で発行されている地域通貨の一種。浅草商店連合会が6万枚を用意し、雷門の脇などで売っている。1〜3月のはずだったが、好評のため4月まで延ばした。

 大判に描かれているのは、子どもに人気のハローキティ。リボンをかんざしに変え、雷門の前に着物で立つ図柄。「猫に小判」、いや「猫の大判」というお話。

 この地域通貨の特性として「通貨自体がお土産としての価値を持つ」という点がある。これは上の地域通貨のどの特性にも含まれないように思うが、これができるのは観光地だったり、キャラクタービジネスができたりと、他にはない特色を持っている地域だろう。実はこれは僕が考えていたアイデアでもある。京都で地域通貨を作って、域内の色んな観光地の意匠をあしらったり、伝統工芸技術を用いたものにしたら、日本国内だけでなく、世界中の人たちが通貨として使うのみならずお土産として持って帰ってくれて、地元に富が貯まっていくのではないか。かつて、NTTはあっちこっちで金箔付きの観光地テレカを売っていて大もうけしておきながら最後は電話台を撤去する暴挙に出た。電話台を撤去するようなことはしないとしても、浅草のキティ小判もアイデアはNTTと発想が似ているかもしれない。結局、僕のアイデアは遙かに先を越されたのだが、誰でも考えることなのかもしれない。

 今、はてなブックマークでは「企業家」が海外に移住する話が話題だが、そういう関係のない話は脇に置いておくと、こういう不況下で有力な地域通貨が出現する話題を見ていると、地域通貨というものが各地域の生き残りを賭けたツールになってくる可能性があるのではないか、と思うのだ。地域通貨はボトムアップで作っていかないと機能しないんだけど、行政がバックアップすることを政策にしてもいいんじゃないかと思う。やっぱり、次期の京都市長選挙で面白いこと言ってくれないかなあ。
posted by ナベテル at 02:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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