今年の夏休みはカンボジアのシェムリアップという街に行ってきた。シェムリアップはカンボジアの中では一番タイ寄りの街。昔から緊張が絶えなかったようで、シェムリアップという街の名前自体、「シェム」=「シャム」=タイを「リアップ」=「一掃する」という意味らしく、戦勝を祝して付けた名前なんだそうだ。
この街に来たお目当ては、もちろん、アンコールワットを初めとする遺跡群。インドから日本まで流れる文化の一端が分かった気がして、とても面白い旅だった。最初は、大長編の旅行記を書こうとしたんだけど、とても書ききれないので、写真中心の旅行記でお茶を濁すことにした。
この街に来たら、まず、アンコールワットを見るしかない。初日からいきなり見て、その後、もう一度見に行った。このお寺は仏像等を安置しながらも、まだ、ヒンドゥー教主体の寺院だ。

参道

参道にある爆弾の痕
内線の痕跡は世界遺産の中にまである。この国は、ちょっと前には、信じられないような大虐殺が平然と行われていた国なのだ。
アンコールワットを初めとする遺跡の修復に力を入れているのが、日本では全く影の薄い我が母校・上智大学だ。実際、アンコールワットの遺跡周辺では、上智大学は一番有名な日本の大学。僕についたカンボジア人ガイドさんは「上智大学の学生はみんな賢そうだけど、勉強ができる大学なのですか?」と日本語で聞いてきた。はったりも含めて「私立大学ではナンバースリー」と答えておいた。

塔門をくぐって敷地内に入ったところ

ここが一番の撮影スポット
中に入ると最初に見られるのが、「ラーマーヤナ」に出てくるラーマ率いるサル軍と悪の王ラーヴァナ率いる羅刹軍の戦いの図。ここの壁画は他のものと比べても本当に生き生きと描かれていて、カンボジア人が「ラーマーヤナ」をとても好きなことが伝わってくる。

主人公ラーマ(右)と弟のラクシュマナ(多分・・)

ラーマ(上)と猿軍の将軍・ハヌマン

悪の王・ラーヴァナ
右の方に行くほど、ラーヴァナ軍が劣勢になって、サル軍がどんどん勢いよくなっていく。ラーヴァナがのっている馬車の図なんかは、エジプトのファラオの戦車の図にも共通する構図だけど、何か関係あるのかしら(多分、ない)。
アンコールワットにはデバター(女神)の図があっちこっちに描かれている。

デバター
アンコールワット自体、未完成の建物なので、失敗?したヌードっぽいデバターや、外枠が書いてあるだけのものもある。

ヌードのデバター

書きかけのデバター
第一回廊の他の所に行くと、日本でもおなじみ、閻魔様によって地獄に突き落とされる図や、ヒンズー教の天地創造である「乳海撹拌」の図もある。乳海撹拌というのは、神と阿修羅がナーガという蛇を綱代わりに綱引きをして乳海を揺する、という感じのもの。乳海撹拌の図は残念ながら修理中で、一番いいところを見られなかった。

閻魔様に地獄に落とされる図

乳海撹拌図
柱の彫刻も半端じゃないです。

柱の彫刻
歴史に記録が残っている限り、アンコールワットに来た初めての日本人は森本一房という平戸藩士。この人はアンコールワットを祇園精舎と勘違いして落書きを残していった(結構バチ当たりなヤツだ)。一房が書いた「祇園精舎図」というアンコールワットの絵図が水戸徳川家に今でも伝わっているそうだ。

森本一房の落書き(上から塗りつぶされている)
回廊も、回っているだけで美しい。

第一回廊外観

第二回廊に上がる階段
第三回廊に上がる階段はものすごく急。上に上がる人数が多すぎないように、下でコントロールされている。

第三回廊に上がる階段

第三回廊から入り口方面を望む
そして、アンコールワットの中心にあるのが、中央塔。ここまで上るのは結構大変。そして、コウモリの糞のにおいがする。

中央塔
というわけで、建物の上の方に上るよりも、壁画が素晴らしいアンコールワットであった。次回は、アンコールトムとバイヨン寺院。